Up パンデミック : はじめに 作成: 2019-03-29
更新: 2019-03-29


    パンデミックとは,感染症の流行のうち「集団壊滅」の趣きのものを謂う。

    人類は,過去に何度もあったであろうパンデミックを過ごして,いまがあることになる。
    ということは,逆に考えると,《パンデミックといえども,集団壊滅までは進まずに終息する》ということである。
    この「終息」は,病原体の消滅ではない。
    病原体は潜伏していることになる。
    そして,《機が熟す》となって,再びパンデミックを起こす。

    この《‥‥ →発生→終息→潜伏→発生→ ‥‥》の内容は,今日の科学でもわかっていない。
    感染症の病理学は,もっぱら医療を守備領域にするに留まっている。


    <終息>
    「ペストの史上最大規模の流行」として「1347〜1353 年にヨーロッパ全人口の約3分の1が死亡」がいわれる。
    しかしこれは,「流行した地域が全滅し,離れた地域が無事だった」という内容ではない。
    「何市では,死者が全体の何分の何」という内容である。
    そこで逆に,なぜ全滅とならずに終息したのか?となるわけである。

    感染者から離れる行動がとられたので,感染が止まったのか?
    しかし,避難者の中に感染者が埋没している確率はゼロではあり得ない。
    そしてひとは集団でしか生きられない。
    一人の感染者が伝染のもとになるのだとしたら,この伝染は集団の全員に及ばずに止むことはないはずである。

    大腸菌は細胞分裂で繁殖するので,培養皿におかれると,はじめ指数関数的に増加する。
    しかし,やがて定常になり,つぎには減少し,そして絶滅する。
    この現象は,「資源の枯渇」で説明される。
    パンデミックの終息も,これがモデルになる。
    ただし「資源の枯渇」の内容が複雑になる,ということである。


    <潜伏>
    動物由来の感染症の場合,これが終息するときの病原体の潜伏先は,もとの動物ということになる。
    この動物と病原体の関係は,「共存」と見ることになる。
    病原体にとっては,宿主あっての自分だからである。

    翻って,人を死なせる感染症は,病原体にとって不本意な感染ということになる。
    本来の宿主でない生き物の中に入ってしまい,調子が狂い,それが<感染者を殺す>になるというわけである。

    <人を死なせる感染症>には,別の解釈も立つ。
    この病原体は,もともと人と共存していた。
    しかし,人がこれを無きものにしようと考え,徹底的にいじめ出した。
    そこでこの病原体は,殺されない形質・感染方式の獲得へと進化した。
    そして獲得した<殺されない形質・感染方式>は,結果的に,感染した人を殺すものになっていた。
    「薬剤耐性の菌・ウィルスの感染症」が,これの例になる。


    <発生>
    感染症の大流行は,<偶然が複雑に組み合わさって成る>と考えるものになる。
    そうでなければ,感染が恒常的に起こっているはずだからである。
    間隔をおいて発生するということは,<シンクロの大きなうねり>が進行しているということである。

    この運動系は,人の外にあるのではない。
    それどころか,人の営みこそがこのうねりの核心的モーメントであるというふうに考えることになる。
    「薬剤耐性の菌・ウィルスの感染症」が,再び例になる。