Up おわりに 作成: 2023-11-21
更新: 2023-11-21


    人間は,人工物を巨大化していくことを文化とする。
    巨大は,強大・頑丈に見える。
    しかし人工物の巨大化は,基盤を脆くしつつの巨大化である。
    それは,基盤が急所になっている。
    急所を突かれると,あっけなく壊れる。

    この喩えが,「バベルの塔」である。
    しかし上に向かって構築するばかりが「バベルの塔」ではない。
    都心はこれを下に向かって構築しているところである。
    即ち,インフラを地下に集約しようとして,巨大な穴を広く・深く掘り続けている。

    その地下は,河口河原の地下である。
    河口河原の地下ということは,海の(へり)の地下である。
    海の水が(おか)の方に少し動けば,泥水に埋まる。
    そして海の水が陸の方に少し動くということはある。
    津波,というわけである。


    本テクストは,津波が防潮堤を越える首都直下地震がそのうち来ることを想定して,「都心=バベルの塔」を考察してみた。
    誤解の無いよう強調しておくが,これは警告の書ではない。
    実際,ひとは歩みを変えるものではない。
    都心のインフラを地下に集約しようとするいまの歩みは,ひとが努めて歩んでいるものである。
    起こっていることは,起こるべくして起こっている。
    現に起こっていることに是非を立てるのは,ナンセンスである。

    本書は,人間の考察である。
    人間の考察は何のためか。
    これから起こることに動じないためである。
    これから起こることは,起こるべくして起こる。
    実際,まさにそのための準備を,いましているところなのである。