Up 砂礫に還る 作成: 2023-11-11
更新: 2023-11-11


    都心は,河口の河原に建設された。
    地盤は洪積砂礫。
    やがてひとは,都心開発の方向を地下開発と定め,河原を掘ることに邁進した。
    これは,狂気の沙汰である。
    河口河原の地下を掘ってつくったものは,洪水・津波で埋まるに決まっているからである。

    埋まるとどうなる?
    鉄筋コンクリートも経年劣化する。
    塩水にさらされた地下建造物では,なおさらである。
    そしてそれは,砂礫を掘って壁を貼り付けたもの。
    壁の支えが弱くなり,地下水の侵入も手伝って,壁の歪み・ひび割れ・剥離が進行する,
    こうして壁は破砕していく。

    その先は?
    地下建造物は破砕して砂礫に還り,周りと同化する。
    砂礫の上に立つ高層ビルは,自重による地盤沈下で傾き始める。
    傾き始めると,傾く一方になる。
    そして遂には倒れる。
    もっとも,ここに至るまでには長い時間がかかる。
    これを目撃する者は,人類では残っていなさそうである。