Up 復興土木事業は,巨大ゴミづくり 作成: 2021-03-11
更新: 2021-03-11


    ひとは,生態系をつくれない。
    ひとは,人の生活圏をつくれない。

    「人の生活圏をつくる」という発想をもつ者は,生態系を知らない者である。
    自然災害時に自己顕示してくる「有識者/専門家」・政治家・デザイナーは,この類である。


    行政の机上作業は,彼らと相性がよい。
    よって,行政は彼らを都合よいものにする。

    そしてこの行政に,利権が群がってくる。


    彼らは,人の生活再建を自分の指導下に置こうとする。
    ひとが銘々勝手に生活再建したら,彼らが絵に描いた「復興事業」が成立しなくなるからである。
    彼らは,ひとがこれまでの地で生活再建することを禁止し,仮設居住地に住まわせる。

    マスコミは,彼らの側につく。
    ひとは多種多様であるが,マスコミは「復興事業」に都合のよい「被災者」像を専らキャンペーンする。
    その「被災者」は,行政の指導に従い,指示待機の構えに甘んじる者である。
    それはすなわち,職に就かないで済む者──年寄り──ということになる。
    職に就かねば生きられない現役世代は,生業を立てられる他の地に移っていくからである。

    こうして,行政がつくった箱物居住地は,そのスタート時点から「限界集落」である。
    この「限界集落」は,管理維持するのに巨額の経費が要る。
    この経費は,割に合わない。
    実際,捻出できない。
    こうして,管理維持からだんだんと撤退する。
    残るのは,巨大ゴミである。


    行政がする「復興事業」は,馬鹿な箱物事業にしかならない。
    これは,能力がどうのという問題ではない。
    誰がやっても,これの他にはならない。

    大衆も,この行政に文句を言える立場ではない。
    行政が大衆を指導するようにさせたのは,大衆自身だからである。

    大衆は,「自立しない」から大衆である。
    大衆は,「行政のリーダシップをつねに求めそれに従おうとする」から,大衆なのである。

    ここで「自立」とは,つぎの達観を謂う:
        災難に逢ふ時節には災難に逢ふがよく候。
        死ぬる時節には死ぬがよく候。
        是はこれ災難をのがるる妙法にて候。


      読売新聞, 2021-03-08
    かさ上げ地区 人口44%減
    被災3県 宅地34%空き地
     東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県で、津波から衝を守るため、土を盛って地盤を高くする「かさ上げ」を行った地区の人口は、震災前より44%減ったことが読売新聞の調査でわかった。 事業が長期化するなどし、ほかの地区に移転する住民が相次いだためだ。 再生された宅地の34%は活用されず、空き地となったままだ。

    事業長期化 住民移住
     3県でかさ上げを行った市町村を取材し、15市町村の33地区について集計した。 商業地だけをかさ上げした地区や、人口が不明な地区は除いた。 震災前に計4万3061人だった人口は、2万4193人に減少していた。 かさ上げした宅地の面積は422ヘクタール、うち144ヘクタールが未活用だった。
     かさ上げ後の街の再生には、土地区画整理事業が多く使われだ。 特定区域を再開発する際、道路や公園を作るため、宅地の位置を変えたり、面積を減らしたりして、元の土地と造成後の土地を交換(換地)する。
     住民の財産にかかわるため、自治体は地権者一人一人から承諾を得る必要がある。 この作業が、復興を長期化させる一因になった。
     33地区のうち、人口が減ったのは26地区。 減少率が91%で最も大きい岩手県宮古市田老地区は、1400人から130人に減った。
    高さ10メートルの巨大防潮堤が津波で破壊され、181人が犠牲になった。 県と市は防潮堤を 14.7メートルにし、平均1.6メートルかさ上げした。 一方で移転を望む住民のため、近隣の高台を造成した。
     市は600人が戻ると想定したが、再び浸水する不安から高台を選ぶ住民が多く、4割は空き地だ。 市の担当者は「防潮堤とかさ上げで最大級の津波でも浸水しない想定だ。安全をアピールしていく」と語る。
     人口が増えたのは5地区、同数は2地区だった。 福島県新地町の新地駅周辺地区の15ヘクタールは、4割弱が空き地だが、人口は187人から240人に増えた。 近くに液化天然ガス施設ができ、同地区に関連会社の社員寮などが建ったためだ。 町の担当者は「中心部にまとまった土地があり、条件がよかった」と話す。
     被災自治体の復興計画の策定に携わった東北大の増田聡教授 (地域計画) は「自治体は震災後の街のあり方をどうするか、事前に住民 と話し合っておくべきだった。復興に時間がかかっても、将来の展望があれば、住民は戻りやすくなる」と指摘する。