Up 「風化させてはならない」の意味 作成: 2021-03-11
更新: 2021-03-11


    「風化させるな」のことばの意味は,「ずっと支援しろ」である。
    支援を求めない者は,「風化させるな」は言わない。

    かくして,「風化させるな」を言い続ける者の筆頭は,自治体の長である。
    彼らは,これを言い続けることが仕事である。
    一般に,「風化させるな」を言う者は,「風化させるな」を言うことを自分の仕事にしている者である。

    「風化させるな」級の事件は,山とある。
    山とあるものに際するとき,ひとはどれかを選びとるのでなく,すべてを捨てる。 ──実際,この場合<選ぶ>は<ひいきにする>である。
    山とある「風化させるな」は,この扱いになる。


    行政は,後先を考えない。
    行政は,その場のいい顔をしようとする。
    批判・非難されないことが,いちばんの大事である。
    実際,自分はいまの担当にずっと就いているわけではない。
    後は野となれ山となれである。

    これは,行政はけしからんという話ではない。
    行政とはこのようなものだということを知って,行政と付き合え──という話である。


      読売新聞, 2021-03-11
    津波被災地 インフラ増
    維持費年 131億円増
    上下水道や道路
     東日本大震災の津波で被災した岩手、宮城、福島3県では、地盤を高くするかさ上げなどの大型の復興工事が行われた。 中でも高台への集団移転は計約1万2500戸が対象となる大事業となった。 しかし、移転によって居住地域が広がり、インフラの新設を余儀なくされ、上下水道や道路の維持管理費は年間131億円 (50%) 増えた。 人口減少が続く被災地では、費用の捻出が課題となる。
    本紙調査 高台移転要因
     読売新聞は1〜2月、3県の沿岸37市町村を取材し、上下水道と道路の延長や維持管理費を震災前後で比較した。 その結果、簡易水道を含む上水道が1081キロ (8%)、下水道が 997キロ (10%)、市町村管理の道路が613キロ (3%) 増えたことがわかった。 総延長は2691キロで、東京ーグアムを超える距離になる。 高台の住宅ヘ水道管を引いたり、道路をつなげたりする必要があり、距離が増えた。
     被災した上下水道管や道路の復旧費や新設費は、復興交付金などの国費で賄われた。 一方、維持管理費は自治体の負担になる。 維持管理費の増加は、高台ヘ水を送るポンプや新設された下水処理場などの保守・点検にかかる人件費の上昇などが理由だ。
     上下水道と道路を40年後に更新した場合の費用を算出していた自治体は34市町村あり、その総額は2兆2305億円に上る。 34市町村の18年度予算の歳入額の合計 (1兆9084億円) を上回る。
     人口減が続く被災地の自治体からは「市民税や固定資産税の収入が減り、新たな予算の確保は難しい」(岩手県大船渡市) と声が上が る。
     一方、東京電力福島第一原発事故の避難指示区域が残る福島県大熊町では、下水道管の93%にあたる65キロが休止になった。 放射性物質で汚染された土砂を一時保管する中間貯蔵施設 (約1600ヘクタール) が住宅地跡に建設されたためだ。
     自治体施設の維持管理に詳しい岩手大の南正昭教授 (都市計画) は「この10年間は、街の生活機能を復活させる必要があった。今後は インフラ維持にかかる費用を下げる努力が自治体に求められる。中長期的に街の機能を集約することなども考えるべきだ」と指摘する。



      同上
    維持費「膨大」
    自治体ため息

    被災地インフラ 女川,水道管13倍に
     東日本大震災の被災地では、高台や内陸への集団移転などによって、上下水道や道路の維持管理費が大きく増えた。 復興事業として新たに整備されたインフラは、40〜50年後に一気に更新時期を迎えることになり、巨額の費用が必要になる。 復興を終えようとしている被災地の自治体は、新たな課題を突きつけられている。


    ■ 職住分離
    「維持管理費が膨大になり、先が見通せない」。 宮城県女川町の職員は頭を抱える。 同町では新たに整備された水道管は160キロ、下水道管は3.6キロ。総延長はそれぞれ震災前の13倍、3倍に延びた。
     同町では震災後、沿岸部を商業エリア、高台を居住エリアにする「職住分離」の街づくりを進めてきた。 高台には16地区、計約300戸が整備され、住民が住む区域は広がった。 水源から高台の各家庭への距離は長くなり、維持管理費は上下水道合わせて、年間4000万円増えた。
     岩手県釜石市。 2019年にラグビー-ワールドカップの試合会場の一つとなった「釜石鵜住居復興スタジアム」が立つ地域には、20キロの下水管が新たに敷設された。 元々は下水道が未整備で、浄化槽を使っていた。 震災後、地盤を高くする「かさ上げ」工事が行われ、下水道を引いた。 市全体の下水道管は1.5倍に増え、年間の維持管理費は1000万円増えた。
    ■ 費用捻出
     釜石市は維持管理費を捻出するため、25年度までの5年間で、職員53人を削減する目標を決める方針だ。 宮城県南三陸町は1世帯あたり月1870円 (10立方メートル) の水道料金を、24年度に8%程度値上げする予定だ。 今後40年間の上水道の更新費用は年平均5.6億円と試算するが、今の財政状況では、年1億円程度が限界だという。
     町の担当者は「これまでのような国の支援は期待できない。町民に協力してもらうしかない」とため息をつく。
     被災地では市町村管理の道路も613キロ増えた。 高台造成を49か所で行った宮城県気仙沼市では、約900世帯から数万円を徴収し、その一部を道路管理費に充てている。
     市内の道路は震災前より計32キロ延びた。 山林を切り開いた道路ののり面は、除草作業などが必要で、年500万円の費用がかかる。 同市住宅課の熊谷理仁主事は「維持管理費をどう確保するかは中長期的な課題。今後も住民の協力を得て、やりくりを続けていきたい」と話す。