Up 「英アストラゼネカ社 ワクチン臨床試験中断」 作成: 2020-09-11
更新: 2020-09-11


      読売新聞, 2020-09-10
    英ワクチン臨床中断
    アストラゼネカ 安全性を確認
     厚生労働省は9日、英製薬大手アストラゼネカが日本などで行っている新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験について、同社から一時的に中断したという報告を受けたと発表した。
     厚労省によると、アストラゼネカが海外で進めている臨床試験で、安全性の確認が必要な問題が発生したという。 同社は、ワクチンが原因かどうかは「調査中」としている。 臨床試験を再開する時期は不明で、厚労省は被験者の病気や容体について同社に確認を求めている。
     同じ社のワクチンは、英オックスフォード大と共同で開発が進んでいる。 すでに米国やブラジルなどで、承認前の最終段階となる臨床試験を行っており、早ければ今秋にも実用化が期待されていた。
     日本国内では8月下旬から四歳以上の約250人を対象に、安全性や有用性を確認する臨床試験に着手している。 国内で同様の問題が発生したかどうかは、わかっていない。
     政府は来年前半までに国民全員分のワクチン確保を目指しており、同社とは今年8月、ワクチンの開発に成功した場合に1億2000万回分の供給を受けることで基本合意していた。 菅官房長官は9日の記者会見で、日本で承認申請があった場合の対応について、「有効性と安全性の確保の観点から、承認の可否については適切に審査していく」と語った。
     同社は9日、本紙の取材に対し、新型コロナウイルスのワクチンを接種する臨床試験で、被験者が原因不明の病気を発症したと答えた。 同社は臨床試験の中断について「臨床試験の信頼性の確保に向けた手続きの一環で、開発の工程への影響を最小限にするよう努める」と説明している。

      同上
    ワクチン「安全優先」
    製薬9社 異例の声明
    欧米の製薬大手9社は8日、新型コロナウイルスのワクチン開発について、「科学的な基準に基づいて臨床試験を進める」とする共同声明を発表した。 トランプ米大統領が11月の大統領選前の実用化を急ぐ中、安全性を重視する姿勢を強く打ち出し、拙速に開発されたとの懸念を払拭する狙いがあるとみられる。
     声明に参加したのは、ファイザー、ビオンテック、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ノババックス、サノフィ、グラクソ・スミスクライン、メルクの欧米9社。 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は、「競争相手の製薬企業同士が共同声明を出すのは異例だ」と指摘している。
     声明では、「接種した人の安全と健康を最優先とする」と強調した上で、「臨床試験で安全性や効果が確認されるまで、ワクチンの使用許可を当局に申請しない」との方針を示した。 世界的な供給体制を整えることも盛り込んだ。
     トランプ氏は、「我々はワクチンをすぐに手に入れることになる」などと早期の接種開始に自信を見せてきた。 米食品医薬品局(FDA)にも、ワクチンの使用を早く許可するようツイッターなどで繰り返し求めており、野党・民主党は、「大統領選に向けてワクチンを政治利用しようとしている」と批判を強めている。
     世界保健機関(WHO)によると、8日現在、欧米や中国などで新型コロナに対する34のワクチンが臨床試験に入っている。
    ワクチン開発に慎重さ求める声
    専門家
     英製薬大手アストラゼネカが、開発中の新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を一時中断した。 専門家からは、新しいワクチンの開発や承認に慎重さを求める声が出ている。
     今回のワクチンは、新型コロナの遺伝子の一部を毒性の弱いアデノウイルスに入れて製造する。 アデノウイルスを使うワクチンは日本で実用化されておらず、安全性は国内で未確認だ。
     政府はアストラゼネカ以外に米ファイザー社と米モデルナ社からワクチンを確保する交渉を進め、ワクチンを共同購入する国際的枠組みにも参加する方針だ。 ワクチンの供給元を分散し、一部の開発が遅れても十分な量を確保する狙いがある。
     浜田篤郎・東京医科大教授(渡航医学)は「重大な副作用が起きれば臨床試験を中断するのが普通で、現段階でいたずらに心配する必要はない。製薬企業や政府は、副作用について国民に十分説明してほしい」と話している。