Up 「ただの風邪」と見切った国との差 作成: 2020-08-18
更新: 2020-08-18


      読売新聞, 2020-08-18
    GDP 年27.8%減
    戦後最悪 コロナ影響
    4〜6月

     ‥‥‥
    米欧落ち込み さらに大きく
     他の先進国の実質GDPを見ると、前期比の年率換算で米国は32.9%減、独仏などのユーロ圏19か国は40.3%減、英国は59.8%減だった。 日本よりも厳しいロックダウンを行った態響が大きかった。
     一方、経済活動の再開が早かった中国(前年同期比)は、1〜3月期にマイナスに転じたものの、4〜6月期はプラスとなった。

    「ただの風邪」(「生活を壊してまで対策するような感染症ではない」) と早々に見切った中国がひとり勝ち──といった絵図である。


    「ただの風邪」と見切った国は,ユーロ圏でもスウェーデンがある。
    これの場合は:
      JIJI.COM, 2020-08-05
    スウェーデンGDP、8.6%減 経済優先でも過去最悪―4〜6月期
     ‥‥‥
    スウェーデン統計局が5日発表した今年4〜6月期の実質GDP (国内総生産) 速報値は、季節調整済みで前期比 8.6%減少した。
     ‥‥‥
    同期のGDPは、ドイツが前期比10.1%減、フランスは13.8%減、イタリアは12.4%減だった。
     ‥‥‥
    統計局によると、減少の主因は輸出の急減と個人消費の冷え込み。前年同期比では8.2%減、1〜3月期は前期比0.1%増だった。
     ‥‥‥

    「輸出の急減」──即ち,他の国の景気に連動してしまうというわけだ。


    「自粛」を正義に掲げてきているメディアは,国民総人口に対する死者の割合の高さを以てスウェーデンを<バチあたりの国>にしようとしてきたが,ロックダウンをやった英国なんかは,この割合でもスウェーデンを上回り,さんざんの(てい)である。


    日本政府も,しばらくは「ただの風邪」と見切って対応していた。
    実際,「日本方式」を唱えていたわけである。
    しかし,首相がブレてしまう。
    4月16日に「緊急事態宣言」。 さらに,5月4日に「緊急事態宣言延長」を宣言。
    こうして,欧米と同じになってしまった。


    註 :「前期比の年率換算とは
    これは「前期比を年率に換算」と説明されるが,景気が不安定・見通し不透明な時節の「前期比を年率に換算」は意味はない。
    「前期比年率」はむしろ,成長度合の拡大表現──違いを大きく見せるための表現──と思えばよい。

    即ち,「前期比」a(%) を式
      (1+a/100)4 = 1+A/100
    で拡大したAが,「前期比年率」というわけである。
    (指数の4は,「年を4四半期 に区切る」の4。)
      例えば,a=1 のとき,
       A = ((1+0.01)4 − 1) × 100 = (1.04060401 − 1) × 100
       = 4.06
    高校数学だと,
      「小さいaに対して,(1+a)n ≒ 1+na」
    が出てくることがあるかも知れない。
    「前期比年率」は,前期比を4倍したものより少し大きい値になる。

    「前期比年率」の数値は,風速の数値のように受け取るべきものである──風の速度は,向き・大きさが絶えず変化している。
    風の強さの体感を数値化しようとするのが「風速」であるように,経済成長の強さのいまの体感を数値化しようとするのが「GDP前年比年率」である。