Up 変異株の同定 (「変異株PCR検査」) 作成: 2022-02-11
更新: 2022-02-11


    変異株の同定は,ウイルスゲノム塩基配列を完全長で決定することが基本になる。
    これは,通常の塩基配列解読法(サンガー法)を適用して行う。

    変異株が同定されたら,人がこれに感染しているかどうかを調べる段に進む。

    この検査に求められることは,所要時間ができるだけ短いことである。
    ──実際,時間が制約でなければ,変異株を同定したときの方法でよいわけである。
    こうして,<変異株に特徴的な塩基配列の有無>を容易に判別できる方法が,開発される。
    そして成るのが, 「変異株PCR検査」である。


    通常の PCR検査は,ウイルスの有無を判別するものであって,変異株の種類は判別できない。
    実際この検査は,「株が何であろうと新型コロナは新型コロナだ」の立場でウイルスの有無を検査しようとするものである。
    よって,検出対象にするゲノム塩基配列は,変異株間で変わらない箇所を択ぶことになる。
    そしてそれを PCR法で増幅した後,蛍光試薬を加えて加熱し,光が強くなれば陽性と判定している。

    一方,変異株PCR検査は,変異が入ってくる箇所を択ぶ。
    特に,ウイルスが細胞に侵入するときに機能するスパイクタンパク質の遺伝子配列である。
    変異株を指すことばとして「N501Y」「E484Q」等を目にしてきているが,この意味は「スパイクタンパク質の 501番目アミノ酸がN (アスパラギン酸) からY (チロシン) に変わった」「スパイクタンパク質の 484番目アミノ酸がE (グルタミン酸) からQ (グルタミン) に変わった」である。

    変異株PCR検査は,DNA 断片を PCR 法で増幅するところまでは,PCR検査と同じ。
    増幅した後,蛍光試薬や温度調節を工夫することで,発光の仕方が変異株によって変わるようにする──みたいなことをしている。