Up 「新型コロナ」はどんな物語か : 要旨 作成: 2022-02-15
更新: 2022-02-15


新型コロナの国別死亡数 : 2022-01-31 まで
──1億人あたり死亡数累計の多い順──
: ヨーロッパ・北米, : 中南米, : 東南アジア
国・地域 人口
(億人)
死亡数累計
(人)
1億人あたり
死亡数累計
(人)
ペルー 0.3251 205,505 632,129
チェコ 0.1069 37,184 347,839
ルーマニア 0.1936 59,984 309,835
ブラジル 2.1105 627,150 297,157
ポーランド 0.3789 105,161 277,543
アルゼンチン 0.4478 120,988 270,183
コロンビア 0.5034 134,079 266,347
米国 3.3562 884,260 263,471
ベルギー 0.1154 28,957 250,927
ウクライナ 0.4399 106,793 242,767
イタリア 0.6055 146,149 241,369
メキシコ 1.2758 305,762 239,663
英国 0.6753 156,222 231,337
チュニジア 0.1169 26,229 224,371
ギリシア 0.1047 23,372 223,228
ロシア 1.4587 324,060 222,157
チリ 0.1895 39,684 209,414
フランス 0.6513 131,576 202,021
スペイン 0.4674 92,966 198,900
エクアドル 0.1737 34,362 197,824
ポルトガル 0.1023 19,856 194,096
ボリビア 0.1151 20,919 181,746
南アフリカ 0.5856 95,022 162,264
イラン 0.8291 132,424 159,720
スウェーデン 0.1004 15,855 157,918
ドイツ 0.8352 117,790 141,032
ヨルダン 0.1010 13,193 130,624
オランダ 0.1710 21,800 127,485
トルコ 0.8343 87,234 104,560
イスラエル 0.0852 8,725 102,406
カザフスタン 0.1855 18,454 99,482
グアテマラ 0.1758 16,379 93,168
カナダ 0.3741 33,722 90,142
アゼルバイジャン 0.1005 8,720 86,766
イラク 0.3931 24,376 62,010
インドネシア 2.7452 144,303 52,566
フィリピン 1.0812 53,891 49,844
モロッコ 0.3647 15,362 42,122
ネパール 0.2861 11,735 41,017
インド 13.6642 495,050 36,230
ミャンマー 0.5405 19,310 35,726
サウジアラビア 0.3427 8,936 26,075
エジプト 1.0039 22,604 22,516
アフガニスタン 0.3804 7,408 19,474
バングラデシュ 1.6305 28,363 17,395
アルジェリア 0.4305 6,566 15,252
日本 1.2427 18,764 15,099
豪州 0.2520 3,760 14,921
パキスタン 2.1657 29,269 13,515
韓国 0.5123 6,333 12,362
ケニア 0.5257 5,580 10,614
スーダン 0.4281 3,422 7,993
エチオピア 1.1208 7,331 6,541
台湾 0.236 851 3,606
ナイジェリア 2.0096 3,135 1,560

      Elton (1958), pp.15-17.
    今世紀の初頭に、アメリカ合衆国東部で、クリが胴枯病菌 Endothisa parasitica に感染して枯れはじめた。
    この菌はアジアから苗木とともに運ばれたもので、アジアで1913年に発見されたのだが、その原地ではクリを枯らすには至らない菌なのである。
    しかしアメリカ東部産のクリの Castanea dentata はこの菌にたいへん弱く、菌の侵入した地域ではほとんど全滅してしまったのである。
    ‥‥ 菌の胞子は風でとばされ、1911年にはすでに少なくも10 州で大増殖し、その損害はこの時点までで 2500万ドル以上にのぼったという。 1926年には、感染したクリの分布はさらに南へ拡がり、1950年までには、最南端以外の全土でクリが枯れ、今は太平洋岸でもほとんど残っていない。
    現時点における解決法は唯一つ、中国産のクリ C.mollissima を移入することしかない。
    この種はその原産地であるアジアにおいて菌との間でバランスをとれるように進化してきた結果、その菌に対する抵抗性を完全とはいえないまでもある程度持っているからである。
    ‥‥ アフリカの大型の狩猟対象獣が血液中にトリパノゾーマを多数に保菌していながら何ということもないのに、ウシやウマなど移入された家畜が感染するとただちに死んでしまう機構もこれである。‥‥
    さて、ヨーロッパ産のスペイングリはアメリカ大陸で、いま問題の胴枯病菌に対して抵抗性を持っていないことが、1911年までにすでに明らかになっていた。
    1938年には、この菌がイタリーで見つかり、実をとるために植えた純林が片端から枯れて行った。 菌はその後スペインに侵入し、イングランドへやってくるのもそう遠い将来のことではあるまい。
    残念なことに、アジア原産のクリはイタリーでは実を結ばず、したがって交雑によって、実を結ぶ抵抗性品種を作り得るかどうかに、将来がかけられている。


    「新型コロナ」はどのような内容の物語になるかというと,このような内容の物語になる。
    ひとは新型コロナを「人間を襲うウイルス」で考えているが,これは間違い。
    主題は,「人間の経済活動に攪乱されるウイルス」である。
    特に今日は,「人間のグローバリズムに攪乱されるウイルス」ということになる。

    地球の年齢は,50億年くらいとされている。
    生物相は,この長い時間によってつくられたものである。
    そして時間が長いことは,生物相が均衡した系に実現されていることを意味する。

    この生物相が,人間の経済活動によって攪乱される。
    その時間は,50億年と比べるとほんの<一瞬>。
    よって攪乱は,<一撃>と同じである。
    生物相の攪乱は,ハチが巣を一撃されたにひとしい。
    こうして,生物相はいまてんやわんやである。


    引用文献
    • Elton, Charles S. (1958) : The ecology of invasion by animals and plants
        Methuen & Co.Ltd, 2015.
        川那部浩哉・他[訳]『侵略の生態学』, 思索社, 1958.