Up 無症状/軽症で済むとはどういうことか 作成: 2022-02-03
更新: 2022-02-03


    新型コロナ感染は,ほとんどが無症状ないし軽症で済む一方で,重篤化したり死ぬ者が出てくる。
    この差は何なのか?

    ヒントは,つぎの2つである:
    1. 年齢群別死亡数グラフが,指数関数的な増加曲線になる。
    2. 欧米とアジアを比較すると,欧米諸国の死亡数の多さが際立つ。


    これは,つぎのことを示唆する:
      「 高齢化,また生活様式の欧米化は,これによって弱ってしまうものが体に存在する」


    病原体の侵入に対し,体は侵入者撃退を発動する。
    この内容は,軍隊の展開である。

    世の中の軍事組織を観ればわかるように,軍事組織は戦争を終わらせるシステムをもっていない。
    敵は殲滅されるものではないので,戦争は延々と続けることになる。

    軍事組織は,戦争を終わらせるシステムをなぜもっていないか?
    もてないからである。
    人間は,そのようなシステムはつくれない。

    では,戦争はどうなって終わるのか?
    軍事組織の外からの「もういい加減にしろ!」の声が優勢になって,終わる。


    体の「免疫反応」も,これと同じである。
    軍隊の展開と「もういい加減にしろ!」の声の2つで成る。
    「もういい加減にしろ!」の声が弱ければ,軍隊が暴走することになり,これは体が焦土になるまでやまない。

    「もういい加減にしろ!」の声を発するものは何か?
    体の住民である。
    体は,一個の生態系である。
    数知れない微生物が住んでおり,この住民が「もういい加減にしろ!」の声を発する。


    軍隊の暴走は,「サイトカインストーム」と呼ばれる。
    これは,「慢性大腸炎」の主題で比較的よく研究されている。
    病原細菌による大腸炎に対し抗生物質治療を施すと,抗生物質が大腸の常在微生物までも滅ぼしてしまうことになる。
    そうすると,病原体に対する体の「免疫反応」は軍隊行動だけになり,これは体組織の破壊をやり出す。
    これが慢性の潰瘍性大腸炎である。
    自己免疫疾患であるため,薬治療では治らない。
    これを直す方法は,常在微生物叢の再生しかない。

    新型コロナに対する体の免疫反応がサイトカインストームになり,体が重篤化したり死に至るメカニズムは,これと同じである。
    重篤化・死亡の原因は,軍隊行動に対し「もういい加減にしろ!」を発する常在微生物叢の貧困である。


    新型コロナは,高年齢の者ほど死にやすい。
    これが示すことは:
      「年をとることは,良質な常在微生物叢が形成されなくなること」
    常在微生物の身になってみれば,「年寄りの体は,栄養が乏しくて,あまり住みたくない」となるわけだ。

    新型コロナは,アジア人と比較して欧米人が死にやすい。
    これが示すことは:
      「生活様式が欧米化することは,良質な常在微生物叢が形成されなくなること」
    確かにその生活様式は,<微生物の排斥>を要素にしている。

    翻って,良質な常在微生物叢が形成できている人は,新型コロナの感染は無症状ないし軽症で済む。
    新型コロナで重篤化・死亡する者の全人口に対する割合は,常在微生物叢に問題を抱える者の割合を示している。


    ひとは,「常在微生物」をわかっていない。
    ──異物に対する駆除に血道を上げているのが,その証拠である。
    そんな彼らは,「肺の常在微生物」と言うと「?」となるはずである。

    肺は呼吸器官のうちであるが,呼吸器官は外との界面である。
    消化器官も,そう。
    これらは,体表の皮膚と同じである。


    体表には,微生物が群がる。
    特に,呼吸器官,消化器官には微生物が群がる。


    新型コロナの侵入に対する免疫反応の現象は,「炎症」である。
    肺の炎症は,皮膚の炎症と同じである。
    戦場は,体の内ではなく,あくまでも外である。
    病原体に侵入された細胞に対する免疫反応は,これを壊して体の外にするというものである。
    血液やリンパ液が体の内から外に滲み出て,その成分が病原体を抑え込む。

    この軍隊のやり過ぎに対して「もういい加減にしろ!」を発すのが,常在微生物である。
    この信号システムはどんなものか?
    慢性大腸炎の研究のところで少しずつわかってきている。


    「免疫反応」はひどくややこしいプロセスで,考えるのがたいへんである。
    しかしこれをしないと,いつまでもマスコミ・「専門家」・行政に騙され,彼らの言いなりになる。
    というわけで,これ以上は簡単にはならないという説明を,ここに示しておく。

    先ず,「自然免疫」と謂って,表皮についた異物を駆除するプロセスがある。
    つぎに,抗体発動のプロセスがある。

    体は病原体が表皮に貼り付いてきたことを,どうやって知るか?
    樹状細胞というものが,表皮の下 (体の内) にある。
    これが,表皮細胞の隙間をくぐって,枝を表皮の外へ伸ばす。
    そして病原体にタッチして,病原体の一部をもぎ取って帰る。
    この敵情報をもとに,敵を不能にするツール──「抗体」──がつくられる。
    抗体が出動し,敵に貼り付いてこれを不能にする。
    併せて,侵入能力が落ちた敵を,殺戮細胞が破壊する。

    敵攻撃,そして敵に侵入された細胞の破壊は,適当なところで止まねばならない。
    その先は,手当たり次第をやる暴走になるからである。

    適当なところで止めさせるものは,既に述べたように,常在微生物である。
    彼らから「もういい加減にしろ!」の声が上がる。
    この声は,化学物質である。
    樹状細胞には,この化学物質を受け取る役割もある。

    樹状細胞が悲鳴信号を受け取ると,鎮静部隊が発動する。
    (このメカニズムについては,いまは「Regulatory T cell」の主題で研究されている段階。)
    こうして,戦いの終結となる。


    このプロセスについてよくよく理解すべきは,体は「ゼロコロナ」ではないということである。
    敵は撲滅するものではなく,折り合いをつけるものである。
    体は生態系であり,これは病原体への対し方を心得ている。
    「ゼロコロナ」を唱えるのは,馬鹿な人間共だけである。