Up カルチャー : 要旨 作成: 2020-08-26
更新: 2020-08-26


      読売新聞, 2020-08-25
    玄関開けると洗面台
    住まいの役割 再設計
     新型コロナウイルス感染症は、日々の暮らしを大きく変えた。 住まいや食、交通など、様々な分野で新たな日常が動き出している。
     埼玉県久喜市の住宅展示場にある注文住宅メーカー、アキュラホームのモデルハウス。 玄関を開けると、中には帰宅後すぐ手を洗えるよう洗面台が。 花粉やホコリなどを吸い取れる掃除機のようなバキュームクリーナーもある。 すぐに入浴したい人のため、玄関から脱衣所までスムーズに移動できる動線にもなっている。
     ‥‥‥


    <災難>に遭うと,つぎはきまって「新たな日常」キャンペーンになる。
    津波のときは,「高い堤防」とか「高台移転」が,キャンペーンされる。
    そして新型コロナは,「在宅勤務」とか「玄関開けると洗面台」というわけだ。

    「新たな日常」をキャンペーンする者は,「新たな日常」を示さねばならないと思う政治と,<災難>を商機にしようとする経済の二つである。
    ちなみに,メディアは後者である。


    ひとは,この種のキャンペーンにすんなり乗ってしまう者と乗らない者に分かれる。
    前者は,「命にかかわる」を<権威>が警告しているので命にかかわると定める。
    後者は,<反権威>の傾向があって,命にかかわるかどうかを自分の生活感覚で定めようとする。

    カルチャーは,前者である。
    後者は,サブカルチャーをつくる。


    新型コロナの「新たな日常」キャンペーンは,つぎのカルチャーと結んでいる:
      <異物から離れる・異物を拭う>
    そしてこのカルチャーが反照的に顕すことになるサブカルチャーは,
      <異物にまみれる>
    である。

    新型コロナの「新たな日常」キャンペーンが顕すカルチャーとサブカルチャーの対立は,都市型と自然型の対立である。
    <異物から離れる・異物を拭う>は,都市型である。
    <土を離れコンクリートに棲む>と同類である。
    カルチャーが<都市型>になるのは,日本は都市 (大都市と小都市) で占められているからである。

    こうして,つぎが新型コロナが顕すカルチャーの対立図式になる:
      カルチャー   = 権威  = 都市 = <異物から離れる・異物を拭う>
      サブカルチャー = 反権威 = 自然 = <異物にまみれる>

    学界も,「主流対反主流」として,この対立構造になる。


    生物進化の智慧は,<異物にまみれる>の方である。
    <異物から離れる・異物を拭う>は,途轍もなくコストのかかることであり,そして実際,成らぬことである。
    そこで,<異物にまみれる>の生き方ができるようになることが,進化の方向になる。
    さらに,<異物にまみれる>は,<異物にまみれる>の積極的活用へと進化する。

      例: 草食哺乳類は,食べた草を分解して栄養に変えてくれる腸内微生物がいて,成立する。

    ヒトも,このように進化してきた。
    しかしひとはこのことを知らない。
    そして<異物から離れる・異物を拭う>のカルチャーをつくる。

    <異物から離れる・異物を拭う>のカルチャーは,生物の自然に逆らうものである。
    自然に逆らえば,バチがあたる。
    簡単な例が,「現代人に顕著」な類のアレルギー症・アトピー症。


    しかしカルチャーは,正のフィードバックをダイナミクスにして,強まるばかりとなる。

    <権威>が,「新型コロナは2, 3年は続く」を言う。
    ひとはこれを受けて,マスクを着け続ける。
    そして,服を着ないという選択が無いのと同じに,マスクを着けないという選択が無くなる。
    マスク装着が,公衆マナーに加わるのである。
    ──「どんな感染症が潜んでいるかわからない,それに備えるのがマナーだ,マスクはいつも着けているようにするものだ。

    大衆の絵図は時代ごとに特徴があるが,令和の絵図の特徴は,どの顔もマスクが装着されていることである。