Up 「国の借金 1100兆円」の意味 作成: 2020-05-13
更新: 2020-05-13


    財政理論のうちに「MMT (Modern Money Theory)」というのがある。
    要旨はつぎのようになる:
     「 商品経済は消費で回転するから,消費を鈍らせないために,民間をお金でジャブジャブにする。
    そのお金は,ただ造ればよい。」
    一見トンデモ理論みたいだが,この理論を地で行っている国がある。
    他ならぬこの日本である:
    • 税収と歳出 (2018年度)
       税収は,57.7 兆円
       このうち
          所得税 19.9 兆円
          消費税 17.7 兆円
          法人税 12.3 兆円
          ──以上の計:49.9 兆円
      これに対し 2018度の歳出は,97.5 兆円。

    • 国債及び借入金現在高 (2019年12月末)
          内国債   987兆円
          借入金 52兆円
          政府短期証券 71兆円
          合計 1110兆円

    • 債務残高 (対GDP比) の国際比較
          1位   日本   236%
          2位 ギリシャ 184%
          ‥‥‥
          6位 イタリア 132%
          ‥‥‥
          13位 米国 106%
          ‥‥‥
          21位 フランス 97%
          ‥‥‥
          25位 カナダ 91%
          26位 英国 88%
          ‥‥‥
          54位 ドイツ 68%

    税収と債務の額を比較すれば明らかなように,「債務」と称しているものの,これは返済することを考えていないものである。


    政府が代わるごとに,「財政健全化」のスローガンが掲げられてきた。
    しかし赤字財政を正さんとする意気は,すぐに挫かれる。

    現政権は,「景気最優先」を掲げて,確信犯的に<金造り>財政をやってきた。
    そしてこの度の新型コロナ財政出動は,ついに「<金造り>財政が日本の定め」と腹を括った感がある。


    日本がこんな(いびつ)な財政の国になったのは,財政を考えられない野党が続いてきたためである。
    <財政出動を要求するばかりの野党>と<大衆に嫌われたくないために野党に迎合する与党>の構図からは,<金造り>財政が導かれるのみである。

    実際,大衆は,国の財政について勉強したことがない。
    負担に対してはこれに反対する声が世論になるが,「反対!」で済んでしまうしくみについては考えてみたこともない。──思考停止があるばかりである。


    ただし,現前は現成である。
    成るべくして成っているということである。
    これも「日本的」のうちということである。
    「是非も無し」と達観すべし。