Up 「正義/ヘイト」: 要旨 作成: 2020-08-27
更新: 2020-08-28


    新型コロナにかかった者の謝罪が報道される。
    自分を賢げにしている者は,そんな謝罪を理不尽だと反発する。
    他人事(ひとごと)だからである。
    この者は,自分が感染したら謝罪し,ひとの感染が自分の迷惑になったときは憤るのである。


    員の一人が出発の集合時間に遅れたため,営業がおじゃんになった。
    遅れた者は,謝罪する者になる。
    他の者は,この謝罪を当然のこととする。
    そして遅れた者に対し,憤懣遣る方無い。

    員の一人が新型コロナに感染したため,営業がおじゃんになった。
    感染した者は,謝罪する者になる。
    他の者は,この謝罪を当然のこととする。
    そして感染した者に対し,憤懣遣る方無い。

    上の二つは,同型である。
    この社会は,ひとに迷惑をかけることを罪とするのである。
    迷惑をかけた者は謝罪し,迷惑をかけられた者はこの謝罪を当然のこととし,さらに迷惑をかけた者に対し憤ることを当然とする。


    迷惑に対する憤りは,「ヘイト」である。
    《迷惑は罪》は,ヘイトとつながる。
    ひとの迷惑になってしまった者は罪の意識をもち,他の者はこの者をヘイトする。

    このヘイトは,正義と表裏になっている。
    その正義は,<迷惑=罪>の排斥である。

    癩に罹った者は罪の意識をもち,他の者は癩に罹った者をヘイトした。
    新型コロナに罹った者は罪の意識をもち,他の者は新型コロナに罹った者をヘイトする。
    学校の「道徳」で授業される「ヘイト」は,欺瞞であり,嘘っぱちである。
    「迷惑を罪にする文化」「ヘイトと表裏の正義」が主題化されないからである。

    本論考の「正義/ヘイト」の表現は,正義とヘイトが表裏であることを言うためである。
    実際,正義とは,反正義に対するヘイトのことである。
    ヘイトの者ほど正義の者である。


    日本は,迷惑を罪とする国である。
    異常に,迷惑を罪とする国である。
    他の国は,はるかに迷惑に対し寛容である。
    迷惑を,ひとの当たり前とするのである。

    日本人は,他の国の<迷惑に対し寛容>を,「だらしない」と見る。
    しかし日本人はこれを,「その国民は,《生きることは周りに迷惑をかけること》がわかっている」と見たほうがよい。
    日本人は,おかしいのである。

    知るべし──自粛警察,帰省警察,マスク警察等は,日本人の鏡像である。
    日本人は,こんな姿形(すがたかたち)をしているのである。