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「馬鹿な戦争──終わらない戦争」は,愚劣な「専門家」・マスコミ・行政と愚劣な大衆のコラボである。
	読売新聞 2021-01-08 の文藝春秋広告
 「専門家」の役回りは,デマゴーグ/アジテータである。
 
 「専門家」は,物を知っている者のことではない。
 自分のおもちゃで遊ぶ者のことである。
 このとき,自分が操っているおもちゃをおもちゃとは思っていない。
 真理・真実を扱っていると思っている。
 
 彼らは,真理・真実を知っている自分は,無知な大衆に真理・真実を是非伝えねばならないと思う。
 この思いは,マスコミとつながる。
 マスコミも,真理・真実を知っている自分は,無知な大衆に真理・真実を是非伝えねばならないと思う者だからである。
 マスコミは,彼らを寵児にする。
 この位相の「専門家」を表現することばは,「トリックスター」である。
 
 
 ここにトリックスターのひとり,西浦博がいる:
   
	東京都「報告日別による陽性者数の推移」
 
 |  | NHK, 2021-01-05 | 東京の感染者数シミュレーション 十分に減少させるには
   
 
   感染拡大が続く新型コロナウイルス対策として、政府は緊急事態宣言を出すことを検討しています。
これについて京都大学の西浦博教授が、新たにシミュレーションを行った結果、東京都の感染者数を十分に減少させるには、2020年の緊急事態宣言と同等のレベルの効果を想定しても2021年2月末までかかるとみられることが分かりました。
 
 2020年4月に初めて緊急事態宣言が出された際には、数理モデルを使った感染症の分析が専門で京都大学の西浦博教授のシミュレーション結果を根拠に、人と人との接触を極力8割減らすことが呼びかけられました。
 
 今回、再び緊急事態宣言が検討されていることについて、西浦教授が改めて東京都の今後の感染者数の推移をシミュレーションしました。
 
 シミュレーションは、感染者1人が何人に感染させるかを示す「実効再生産数」と呼ばれる数値を使って行われました。
 
 それによりますと現在の感染状況から、東京都の実効再生産数はおよそ1.1となり、仮に新たな対策をせずにこの状態が続くとすると2月末時点での新たな感染者数は1日およそ3500人、3月末にはおよそ7000人まで増えるとみられるということです。
 
 そのうえで、2020年、経験した流行の第1波や第2波の際のデータを参考に新たな対策をとることでどれだけ感染者数が減るかを数理モデルを使って計算しました。
 
 その結果、飲食店に限定して時短営業などの対策をとった場合、実効再生産数は10%下がって0.99になると想定されるということで、この状態だと新たな感染者数はほとんど減らず、2月末時点で1日およそ1300人となりました。
 
 一方、実効再生産数を今よりも35%少ないおよそ0.72まで下げることができたとすると1か月半後の2月25日に新たな感染者数が1日100人を下回ったということです。
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 ひとは,「数理モデル」「シミュレーション」が実際にどんなものかを知らないので,上のような報道に遭うと,ことばをそのまま信じてしまう。
 
 「シミュレーション」は,ただの計算である。
 肝心は,モデルである。
 モデルがナンセンスなら,シミュレーションもナンセンスである。
 
 西浦はいまだに,現況を「感染拡大ステージ」だと思っている。
 そして,「感染者1人が何人に感染させるか」モデルで,「感染拡大」をシミュレーションする。
 
 東京都が連日発表している「本日の感染者数」は,「本日の検査により陽性がわかった者の数」である。
 感染はとっくに蔓延している。
 検査は,陽性者の掘り起こしである。
 
 しかし西浦の「本日の感染者数」の解釈は,マスコミ・行政・大衆と同じである。
 「本日の感染者数」を,「感染拡大」と解釈するのである。
 
 実際,5日に報道された上のシミュレーションは,その2日後に早くも破綻した:
 
   
	ナンセンスなモデルでシミュレーションして,これを発信すれば,愚劣なデマゴーグ/アジテータになる。
 西浦は,これである。
 
 最初の緊急事態宣言に導いたのも,西浦の「対策ゼロなら40万人死亡」であった:
 |  | 日本経済新聞, 2020-04-15 | 「対策ゼロなら40万人死亡」 厚労省クラスター対策班
	
新型コロナウイルスの感染拡大で、人と人との接触を減らすなどの対策を全く取らない場合、国内では重篤患者が約85万人に上り、半数が亡くなる恐れがあるとの試算を厚生労働省のクラスター(感染者の集団)対策班が15日、公表した。
	
公表した対策班の西浦博・北海道大教授(理論疫学)は人工呼吸器などによる呼吸管理や集中治療室(ICU)での治療が必要となる人を重篤患者として推計した。
	
試算は海外の流行を基に、1人が平均して感染させる人数(実効再生産数)を2.5人と仮定した。外出自粛要請などの対策を全く取らなかった場合、重篤患者数は15〜64歳が約20万1300人、65歳以上の高齢者が約65万2000人で計85万3300人となった。
	
試算では対策をしなかった場合、重篤患者の49%が死亡すると予測。西浦教授は死者数を出していないが、単純計算で約41万8000人が亡くなることになる。
	
試算した西浦教授は「新型コロナウイルスに対して何も対策をしない丸腰だった場合の数字。このウイルスは接触を大幅に制限すれば流行を止めることができる」と指摘。人と人との接触を8割減らせば、約1カ月で流行を抑え込めるとの見方を改めて強調した。
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 西浦は,自分の間違いを清算しない者である。
 したがって,同じデマゴギー,アジテーションを繰り返すことになる。
 
 わたしは職業柄,ナンセンスなモデルを立ててナンセンスな結論をもっともらしく述べる者たちを嫌というほど見てきたので,西浦の<性懲りの無さ>がよくわかる。
 <性懲りの無さ>は,狭量/偏執が理由である。
 狭量/偏執は,脱けられない。
 それ自体が,狭量/偏執への正のフィードバックになるからである。
 
 
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