Up ワクチンは変異株にも効く」は何を指しているか 作成: 2022-02-11
更新: 2022-02-12


    「3回目接種はオミクロン株にも効く」ということで,3回目接種がキャンペーンされている。
    ひとは,「3回目接種はオミクロン株にも効く」のことばをそのまま受け取る。
    そして3回目接種会場へ向かう。

    ひとは,「このことばは,どういう内容のことを言っているのか?」という疑問をもたない。
    この疑問をもたないのは,このような疑問の形があることを知らないためである。


    「3回目接種はオミクロン株にも効く」を唱える者は,「効果=中和抗体価」の意味でこのことばを使っている:

    「中和抗体価 neutralizing antibody titre」は,つぎのように計算されるものである:
    1. 検体は,ワクチンを接種した者の血清。
      これをスタート S0 として,2倍希釈液 S1,22 倍希釈液 S2,23 倍希釈液 S3, ‥‥ , 2n 倍希釈液 Sn を,同量につくる。
    2. ウイルス液を,S0, S1, ‥‥ , Sn それぞれに同量混ぜる。
      各 Sk で,中和抗体がウイルス粒子に結合する。
      中和抗体の数が多ければ,この結合によってすべてのウイルス粒子が中和される。
      少なければ,中和されないウイルス粒子が残る。
    3. S0, S1, ‥‥ , Sn をそれぞれ,培養細胞に接種する。
      中和されないウイルス粒子が残った Sk が接種されると,ウイルスが細胞に侵入し,これによって壊れる細胞が出現する。
    4. 細胞破壊が Sk まで観察されず,Sk+1 で観察されるとき,「Sk は S0 の○倍薄い」のその「○」を ──この場合は, 2k を ──「中和抗体価」と定める。

     註: ここでは話をしやすくするために,「2倍ずつ希釈」にしたが,S0, S1, ‥‥ , Sn をつくる希釈の仕方にきまりはない。


    この「定義」からわかるように,「中和抗体価」は独立した数ではなく,他の検体で同じことをしたときの値と,比較するものである。
    即ち,「Aの中和抗体価は Bの中和抗体価の○倍」のように言う。
    特に,この「○倍」は,ひとが思い浮かべる量の「○倍」とは全然違うものである。

    しかも,この「中和抗体価」にはトリックがある。
    検体の血清中の抗体は,《すべてがワクチンによってつくられたもの》とはならないからである。
    ひとは,オミクロン株に被曝している。
    そして,体本来の免疫反応として,オミクロン株に対する抗体をつくっている。
    この抗体が,中和抗体価を引き上げることになるのである。


    しかしひとは,このことを知らない。
    そこで,つぎのような報道を見ると「すごい!」になってしまう:
      NHK, 2021-12-21
    オミクロン株へのワクチン効果
    “モデルナ 3回目接種で大幅上昇”

    新型コロナウイルスの変異ウイルス「オミクロン株」へのワクチンの効果についてアメリカの製薬会社モデルナは、3回接種することで中和抗体の効果が大幅に上昇することを実験で確認したと発表しました。‥‥‥


    「3回目接種はオミクロン株にも効く」を唱える者たちは,そしてこれの受け売りをするマスコミは,なぜこのような騙しを臆面も無く行えるのか?
    これも彼らの生業 (商売) のうちだからである。


    知るべし。
    統計で騙そうとする者は,「倍」を使って値を大きく見せることを常套手法にしている。

    先週木曜は給料日の直前で,財布に 10円しか残っていなかった。
    今日の財布には 1万円入っている。
    この前後の比較に,「所持金が 1000倍になった」と表現する者は,「倍」のことばの使い方を知らない阿呆である。

    統計で騙そうとする者は,これと同じことをする。
    彼らは,「倍」表現を悪用する煽動者である。

    NHK は,これの最も悪質な部類である。
    変異株の流行開始期に「先週木曜の新規感染者数の ‥‥ 倍」の言い方で,ひとの恐怖を煽り,己のイデオロギーに世論を誘導しようとする。