Up 超過死亡 作成: 2020-06-26
更新: 2020-06-26


      IDSC :「インフルエンザ・肺炎死亡における超過死亡について」
    http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/inf-rpd/00abst.html
    インフルエンザの流行は社会に大きな影響を及ぼすが、外来受診者数や、インフルエンザあるいは肺炎を死因とする死亡数、医療費など、しばしば取り上げられる統計指標をそのまま「社会へのインパクト」とするには、それぞれに欠点がある。
    まず、インパクトは、実際の患者数の多さ、その重症度、毎日の生活への支障、個人的・社会的経済的損失、医療費、精神的な影響などのすべてを包括的に検討して求めるべきであるが、インフルエンザの医療機関を受診しなかった患者を含めた総患者数を把握することは事実上困難である。
    重症度は、病原体、環境、患者側などの複数の要因で決定されるため、死亡数は罹患者数と単純には比例しない。
    健康への影響や医療費の場合、軽快した場合と死亡した場合で大きく異なり、経過別の患者数の把握が必要となる上、総額、個人負担問わず、医療費情報そのものが調査されていない。
    従って、現存する患者数から「社会へのインパクト」を示すことはできない。
    また、疾病による最も重大な結果である死亡だけに焦点を絞って考えた場合も、原死因をインフルエンザとすると、インフルエンザから二次性の細菌性肺炎を続発して死亡に至った事例は含まれなくなり、死亡統計上の「インフルエンザによる死亡数」は、インフルエンザの影響を表現する上で適切ではない。
    一方、原死因を肺炎とすると、インフルエンザとはまったく関係のない病原体による肺炎死亡も含むこととなる。
    このように、インパクトを測る上で、単一の最適な指標が無いのが実情である。

    これらの諸問題を是正するために世界保健機関(WHO)は、「超過死亡(excess death, excess mortality)」という概念を提唱している1)。
    超過死亡とは、インフルエンザが流行したことによって、インフルエンザ・肺炎死亡がどの程度増加したかを示す、推定値である。
    この値は、直接および間接に、インフルエンザの流行によって生じた死亡であり、仮にインフルエンザワクチンの有効率が100%であるなら、ワクチン接種によって回避できたであろう死亡数を意味する。
    この、インフルエンザの流行によってもたらされた死亡の不測の増加を、インフルエンザの「社会的インパクト」の指標とする手法について多くの研究がなされ、現在の国際的なインフルエンザ研究のひとつの流れとなっている。
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