Up 「対露経済制裁」の実際 作成: 2022-04-09
更新: 2022-04-09


      読売新聞, 2022-04-08
    ルーブル・露株価 持ち直し
    政府取引制限 下支えか
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     モスクワ外国為替市場では7日、ルーブルが急伸した。 ロイター通信が報じた。 対ドルで一時、1ドル=74ルーブル台をつけ、2月11日以来の高値水準となった。 株価も上昇したという。
     ルーブルの対ドル相場は3月下旬、1ドル=80ドル台となり、ロシアがウクライナに侵攻した2月24日以前と同水準に回復した。
     厳しい制裁による打撃を受け、国際的な経済活動からの「孤立化」が進んでいるにもかかわらずルーブルが回復基調にあるのは、ロシア政府が「ロシア売り」に歯止めをかけるため、強引とも言える対策を相次いで打っている「効果」とみられている。
     例えば、ロシア政府は国内の輸出企業に、外貿収入の8割を売却してルーブルを買うように義務付けている。 また、銀行の外貨販売の禁止や、市民にも外貿預金の口座からの引き出しを制限し、ルーブルを、ドルや円などと交換する動きを封じている。 いずれも、ルーブルの価値を守るのが狙いだ。
     3月末には、プーチン露大統領が、日米欧など「非友好国」に対し、ロシア産天然ガス購入の際に「ルーブル払い」を求めることを表明。 実際には、外国企業が外貨を銀行に振り込み、銀行がルーブルに両替してガス会社に支払う仕組みだが、ルーブル下落を防ぐ効果が見込まれている。 4月には、天然ガス以外の輸出品目についても、ロシア政府は「ルーブル払い」を求める意向を表明。 日米欧は一斉に反発している。
     持ち直しは、株式市場にも見られる。 ウクライナ侵攻が現実味を帯び始めた2月中旬から株価が大幅に下落し、2月下旬から約1か月間、取引を全面的に停止した。 しかし、3月下旬に取引を再開してからは、 代表的な株価指数「MOEX」が、2月につけた今年の最安値から2割程度上昇した。
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    ルーブル・露株価を持ち直させているのは,外国企業である。
    日欧米政府の唱える「対露経済制裁」は,その実ごく限定的だということである。
    実際「対露経済制裁」は, 「やってますよ」アピールのポーズと半々といったところである。


    ロシアと商いをしている外国企業は,ロシアが言ってくる「ルーブル払い」に応じる。
    ロシアの産品の輸入業者は,ルーブルで払うために,ルーブルを買う。
    そして,ロシアが示してくる交換レートでルーブルを買うことになる。
    ──商人にとって,商いをしないという選択肢は無い。

    ロシアは,外貨建て対外債務の返済をルーブルで行うということも,決めた。
    問題は外国の債権者がこれに応じるかということになるが,<応じない>は<返済されなくてよい>になる。
    果たしてどれだけが「ロシアが方針転換するまでがまんする」をやれるか?
    がまんできなくてルーブルでの返済を受けた者は,ルーブルをドルに交換できるまでの間は,ルーブルが高値で支えられていることを願うことになる。


    ロシアは,ドルを持っていられる間は,だいじょうぶである。
    外国に依存している産品は,中国経由で買えばよいからである。

    国内では,ドルの「無駄遣い」を引き締めることになる。
    民には,ルーブルをドルに換えることを禁じる。
    ドルを得た輸出業者には,そのドルをルーブルに換えることを義務づける。


    マスコミは,対露経済制裁が着実に効いているように報じているが,これは希望的観測というものである。
    ロシアは,自給自足できる国である。
    いまの程度の経済制裁では,ロシアが経済逼迫するとはならない。
    実際,経済制裁の効果として期待されているものは,ロシア国内が反プーチンに傾くことであり,それ以上ではない。