Up | 「集団安全保障」幻想 | 作成: 2023-07-17 更新: 2023-07-17 |
ロシアが NATO 加盟国に武力侵攻することがあれば,NATO 加盟国全体がロシアと戦う──これが,ルールである。 ウクライナはいまロシアと戦争している。 ウクライナを NATO に加盟させたら,NATO 加盟国はロシアと戦争することになる。 ウクライナへのロシア侵攻が自国の脅威にならない国は,ウクライナの NATO に反対することになる。 実際,NATO 加盟国は,2タイプに分かれる: NATO の創設では,核戦争が想念にあった。 この場合,ロシアから近い・遠いは,問題にならない。 しかしいまの NATO は,ロシア侵攻がロシアから遠い国に及ぶとは考えていない。 NATO にとって加盟国の数は,核の数と同じで,威嚇の意味しかない。 「ロシアに侵攻の企てをもたせない」──これが NATO が立っている理由である。 ロシア侵攻が実際に起きてしまうと,NATO としてできることはないのである。 ロシアの侵攻に対し,加盟国は一つにまとまらない。 一致できることは,ウクライナを「支援」して,ロシアを消耗させることである。 「支援」とは,「せっせと戦え」ということである。 ウクライナは,ロシアに侵攻され,そして欧米とロシアの駆け引きの材料になることが,定めである。 理由は,地勢である。 地勢はどうしようもないことなので,「定め」なのである。 このウクライナと比較されるのが,北朝鮮である。 特に,どちらも「核兵器」が要所になっている点において。 ソ連邦の時代,ウクライナには核兵器がおかれていた。 ウクライナは,独立において,核兵器を放棄した。 欧米とロシアの駆け引きに従ったのである。 これが,いまのロシア侵攻を許すことにつながる。 北朝鮮が核兵器を至上とするのは,これだけが他国から侵攻されない方法として,当てにできるものだからである。 北朝鮮の核は,アメリカを向いているわけではない。 北朝鮮が侵攻を最も恐れねばならないのは,中国である。 ちなみに,北朝鮮が家族支配であるのには,ちゃんと意味がある。 国の統治は,象徴支配でないと,傀儡政権がつくられてしまうのである。 (象徴は替えられないので,傀儡政権が立つのを防げる。) 実際,香港は中国傀儡政権が立って,中国に帰した。 台湾も,こうなるのはたやすい。 民主主義は経済自由主義であり,経済自由主義の商人に自国は存在しない。 日本経済が中国第一なのと同様,台湾経済も中国第一なのである。 中国第一の政権が立てば,それは中国傀儡政権と区別がつかない。 北朝鮮はこれをよく知っている──と言ったら持ち上げ過ぎのように思われるかも知れないが,結果的にそうなのである。 好き嫌いはともかく,北朝鮮の家族支配体制と核兵器開発は,地勢的に不利な国ならではの,理に則ったものなのである。 |