Up 「集団安全保障」幻想 作成: 2023-07-17
更新: 2023-07-17


読売新聞, 2023-07-13





読売新聞, 2023-07-16



    NATO は,ロシアを敵とする集団安全保障の組織である。
    ロシアが NATO 加盟国に武力侵攻することがあれば,NATO 加盟国全体がロシアと戦う──これが,ルールである。

    ウクライナはいまロシアと戦争している。
    ウクライナを NATO に加盟させたら,NATO 加盟国はロシアと戦争することになる。
    ウクライナへのロシア侵攻が自国の脅威にならない国は,ウクライナの NATO に反対することになる。


    実際,NATO 加盟国は,2タイプに分かれる:
    1. ロシアと隣り合わせで,ロシアの侵攻を受ける可能性のある国
    2. そのような国を,緩衝地帯として使える国

    NATO の創設では,核戦争が想念にあった。
    この場合,ロシアから近い・遠いは,問題にならない。
    しかしいまの NATO は,ロシア侵攻がロシアから遠い国に及ぶとは考えていない。

    NATO にとって加盟国の数は,核の数と同じで,威嚇の意味しかない。
    「ロシアに侵攻の企てをもたせない」──これが NATO が立っている理由である。
    ロシア侵攻が実際に起きてしまうと,NATO としてできることはないのである。

    ロシアの侵攻に対し,加盟国は一つにまとまらない。
    一致できることは,ウクライナを「支援」して,ロシアを消耗させることである。
    「支援」とは,「せっせと戦え」ということである。


    ウクライナは,ロシアに侵攻され,そして欧米とロシアの駆け引きの材料になることが,定めである。
    理由は,地勢である。
    地勢はどうしようもないことなので,「定め」なのである。

    このウクライナと比較されるのが,北朝鮮である。
    特に,どちらも「核兵器」が要所になっている点において。

    ソ連邦の時代,ウクライナには核兵器がおかれていた。
    ウクライナは,独立において,核兵器を放棄した。
    欧米とロシアの駆け引きに従ったのである。
    これが,いまのロシア侵攻を許すことにつながる。

    北朝鮮が核兵器を至上とするのは,これだけが他国から侵攻されない方法として,当てにできるものだからである。
    北朝鮮の核は,アメリカを向いているわけではない。
    北朝鮮が侵攻を最も恐れねばならないのは,中国である。


    ちなみに,北朝鮮が家族支配であるのには,ちゃんと意味がある。
    国の統治は,象徴支配でないと,傀儡政権がつくられてしまうのである。
    (象徴は替えられないので,傀儡政権が立つのを防げる。)

    実際,香港は中国傀儡政権が立って,中国に帰した。
    台湾も,こうなるのはたやすい。

    民主主義は経済自由主義であり,経済自由主義の商人に自国は存在しない。
    日本経済が中国第一なのと同様,台湾経済も中国第一なのである。
    中国第一の政権が立てば,それは中国傀儡政権と区別がつかない。

    北朝鮮はこれをよく知っている──と言ったら持ち上げ過ぎのように思われるかも知れないが,結果的にそうなのである。
    好き嫌いはともかく,北朝鮮の家族支配体制と核兵器開発は,地勢的に不利な国ならではの,理に則ったものなのである。