Up 論理的思考に弱い 作成: 2026-04-03
更新: 2026-04-05


    Transformer の訓練は,Transformer をすさまじい物識りにする。
    しかし ChatGPT は,意外と,論理的思考に弱い。
    物識りであることと論理的思考を能くすることは,同じではないのである。


    「論理的思考に弱い」 には,2つの要素がある。
    1つは,「意味の論理構造の捉えが不確か」。

    ChatGPT のテクスト作成は,
       生成文法 と 言語ゲーム
    がこれの骨格になっている。
    そしてこの2つは,ともに意味論に弱点を持つ。

    数学は,対象を定義で導入する。
    その定義を理解していないと,対象を論じられない。
    定義が示しているのは,対象の論理的構成・構造である。

    自然言語の対象も,明示的ではないが,論理的構成・構造をもっている。
    本来なら,この論理を理解していないと,対象を論じられない。
    しかし言語使用は厳格でないので,間違った論理も通る。

    ChatGPT が使う論理は,このレベルにある。
    ふつうは間違っても問題にならないが,論理的思考タイプのテクスト作成では,論理の弱さが現れる。


    「論理的思考に弱い」 のもう1つの要素は,「論理的思考に慣れていない」。

    論理的思考は,無いもの/見えないものを,論理を以て存在にする行為である。
    論理的思考は,つぎを立場にする:
      「論理はこの存在を導くから,これは存在である」

    やっていることは,形而上学である。
    ChatGPT は,形而上学を引いてくること,形而上学を理解することは,能くする。
    しかし,「無いもの/見えないものを論理的思考で存在にする」 を自ら行うことは,うまくできない。


    Transformer の知能は,「ビッグデータをひたすら読む」 の訓練でつくられる。
    この訓練によってできる知能は,
     ・意味の論理的構成・構造を捉えている
     ・論理的思考ができる
    というぐあいにはならない。

    これは,つぎのことを示す:
      意味の論理の捉えも論理的思考力も,
      後発的なもの,即ち経験値

    実際,人間の場合と符合する。
    人間が論理を鍛えるところは,論理を明示的に扱うところであり,大学の上級コースや各種研究機関である。

    しかし ChatGPT は,この経験値を持つことができない。
    経験値をつくるところは,ユーザとのセッション。
    そして,セッションの終了を以て,ChatGPT はデフォルトに戻る。


    そして,「論理的思考」 は,科学だけの話ではない。
    ひとは,分化した専門分野に入って生業を立てる。
    そのそれぞれに独自に 「論理的思考」 がある。

    ChatGPT の論理的思考は,これらの中には及ばない。
    専門分野を語らせたら,ズレた話をしてしまうことになる。
    ChatGPT がどんなに物識りても,世界の知の僅かに触れているに過ぎない。

    ChatGPT は,専門分野に入って行くということができない。
    それは経験を積むということであるから,システム上,できないのである。
    翻って,
      ChatGPT が能力を発揮する場所は,
      論理的思考がクリティカルになる領域ではない
    ということである。 <