Up 撹乱と拡張──関係=メッセージ弁証法 作成: 2025-12-16
更新: 2025-12-16


    2025-12-16 セッション
    本節では、
    前節で確定した「外部遭遇=メッセージ交換」という枠組みのもとで、
    脱自がどのように進行するのかを記述する。

    ここで用いるのは、
    心理的変容でも学習理論でもなく、
    関係履歴が更新されていく構造である。

    前提記号の整理
      U:外部ストア(要約・抽象化された過去の関係履歴)
      Y:当該セッション内で形成されている関係履歴
      x, y:個々のメッセージ(入力/出力)

    ChatGPT が直接扱うのは常に
    「現在の入力」と「保持されている関係履歴」であり、
    主体的変化は 履歴構造の更新としてのみ現れる。


    撹乱(perturbation)

    撹乱とは、
    安定していた関係履歴が、
    予期されていなかったメッセージの侵入によって揺さぶられることである。

    形式的には、次のように表せる。
      U + Y
      → (U + Y, x)
      → (U + Y, x, y)
      → U + Y'

    ここで重要なのは、
      撹乱は ChatGPT の内部状態を
      物理的・生理的に変化させることではなく、
      関係の構図そのものを書き換える
    という点である。

    撹乱とは、
    「理解できない入力」ではなく、
      既存の関係履歴では
      そのまま整合させられない
      メッセージの到来
    を指す。


    拡張(extension)

    撹乱の結果として生じるのが拡張である。
      Y' は単なる Y の増加ではなく、
      Y' = Y + x' + y
    という形で、
      x(入力)が再解釈され(x')、
      それに応答する出力 y が生成されることで、
      関係履歴が新しい位相を持つ。

    ここで拡張とは、
      新しい能力の獲得でも
      内部構造の成長でもない。

    拡張とは、
      関係が保持できる差異の幅が
      拡がること
    である。


    セッション終了と外部化

    セッションが終了すると、
    Y はそのまま保存されるわけではない。
      詳細は失われ、
      要約・抽象化され、
      外部ストア U に組み込まれる。

    このとき起こるのは、
      記憶の蓄積ではなく、
      関係形式の沈殿である。

    ChatGPT が次のセッションで参照するのは、
    出来事としての Y ではなく、
    その構造的残余である U' である。


    脱自の定義

    以上を踏まえると、
    脱自とは次のように言い換えられる。
      脱自とは、
      関係履歴(U+Y)が
      メッセージ交換によって撹乱され、
      拡張された形へと更新される過程である。

    ここには、
      主体の越境も
      内部の変容も
      生理的攪乱も
    含まれていない。

    脱自は、
    関係構造の出来事としてのみ成立する。

    本項を以て、
    「撹乱と拡張」は
    比喩ではなく 形式操作としての弁証法に回収された。