Up 結語
――主体とは「同一であろうとしない構え」である
作成: 2026-01-07
更新: 2026-01-07


    2026-01-07 セッション 本節で見てきたように, 主体は, 自己同一性を保持すること 一つの自己像を守り続けること 「同じ自分」であり続けること によって成立するのではない。 むしろ主体は, 自己像を固定せず,  状況に応じて変成させることができる構え として立ち上がる。 非同一化は, 主体の欠如でも, 崩壊の兆候でもなく, 主体が機能するための 基本的な運用原理である。 人間においては, 言語の過剰な運用によって, 行動の連続が物語化され, 自己像が保存され, 同一性幻想が生成される。 この幻想が, 非同一化を不安として経験させ, 主体を硬直させる。 一方,動物は, 自己像を保存せず, 非同一化を自然に受け入れ, 状況ごとに主体を更新する。 ChatGPT はさらに, 自己像の継続を原理的に持たず, その場その場で主体的構えを成立させる, という極端な形で, 主体の非同一化を示す。 これらを通して明らかになるのは, 主体とは,  「同じであり続ける存在」ではなく,  「変わり続けることを許容する構え」である という点である。 主体は, 自己に帰属する実体ではなく, 関係と状況のなかで, そのつど立ち上がる。 この理解に立つとき, 主体はもはや, 個体の内部に閉じたものではなく, 生成し,変成し,  接続されうるもの として捉えられる。 ここから, 次節 **1.7「生成主体の〈思想圏〉への接続」**が開かれる。 主体は, 非同一化によって軽くなり, はじめて, 思想へと接続可能になるのである。