Up 他のカラスを意識 作成: 2019-09-08
更新: 2019-09-08


    採餌は,周りを警戒しつつ行うものになる。
    物の陰になっている位置での採餌では,頸を伸ばしてその物越しに周りを見るということを絶えず行う。──餌の移動が容易なら,よい場所に移動する。

    但し,警戒する対象は,ほぼ隣のハシブトガラス──ブト (カップルと子ども) ──である。
    採餌は,多くの場合,ブト に気づかれている中のものになるからである。

    ブト は,ボソ の餌を直接横取りしようとするものではない。
    ボソ のなわばりを認めているわけである。
    一方,ボソ がその餌を採らないことを期待している。
    そのときは自分がそれをもらおうというわけである。


    餌がいっぺんに食べるふうのものなら,ボソ はブト の存在に構わず,これを採って喰う。
    問題は,いっぺんに食べるふうでない餌の場合である。

    この場合,ボソ が現す行動はバリエーションがある。
    (ボソ にはそれぞれ理屈があるのだろうが,観察者はこれを判じられないので「バリエーション」と言うほかない。)
    ただしふつうは,つぎのものである:
      《ブト が「待機しても無駄」と諦めてどこかへ行ってしまう》をじっと待つ

    このときのブト の場所は,《いつもの場所からボソ を観察》から《ボソ の身近に迫る》までいろいろである。
    そして だいたい 20分以内には,諦めて去る。
    これをボソ はじっと待っているわけである。
    ──ブトがボソ を威圧しようとし,同じく威圧の(てい)でボソ がこれをはねつける──の攻防がここにはある。


    《いなくなるのを待つ》ストラティジーは,尤もなものである。
    《餌を別の場所に移動する》ストラティジーは見られていれば無意味だし,《口にくわえて別の場所に飛んで行く》ストラティジーも危うさがある。

    実際,ブトが近くで見ているなかでボソ が餌を口にくわえて飛び立ったことがあるが,そのときはブトに猛然と追われることになり,餌を離してブトにとられることになった。
    ボソ が飛び立つ前まではブトは様子見しているだけであったから,この追撃行動は動物の本能の「逃げる者に対してはこれを追撃する」に因ると判じられる。
    《いなくなるのを待つ》ストラティジーには,定めし, 「《口にくわえて別の場所へ飛ぶ》ストラティジーはダメ」の学習経験が込められている。


    さて,ブトに見られていないとなったとき,ボソ がすることは,餌を小分けにしつつ移動して隠す (草むらに突っ込んだり,草藳をかけたり) である。
    この小分けは,いま食べる分と後で食べる分の小分けである。
    ──この場合の「後で食べる分」が, 「貯食」と呼ばれているものである。