Up | カラスの色が黒であるとは? | 作成: 2023-06-29 更新: 2023-06-29 |
即ち,カラスの体は,黒を発色する。 ここで問う。 その発色のしくみは? 生物学のテクストが生物の色を説明する仕方は,「色素」と「構造色」である。 ひとはこの説明でわかったつもりになる。 しかしそのテクストは,「この色は構造色である」を言うとき,「この構造からは,このメカニズムによって,この色が導かれる」を言わない。 そこでは,「構造色」のことばが「色素の存在が認められなけれは,それは構造色」のように使われている。 「色素」の方はどうか? そのテクストは,「この色素のこの配置構造からは,このメカニズムによって,この色が導かれる」を言わない。 「構造色」を言い出せば,「色素による色」も構造色である。 そもそも,「色素」に対し「色素でない物質」があるわけではない。 「色素」とは,人間の可視光線の一部吸収が顕著な物質に対する呼び名ということになる。 「色素」かどうかは,<程度>の話である。 そして「吸収」の意味も,ほんとうはわかっていない。 要するに,「色素・構造色」は,発色のしくみを思考停止する便利なことばとして使われているのである。 生物の色をこのことばでわかったつもりになるわけにはいかない。 物に色があるわけではない。 実際,物の色はそれを照らす光次第である。 「物の色」とは,つぎの現象であるとしか言えない:
こんな光をこんなふうにAにあてると, 場所Pではこんな光がこんなふうにAから返ってくる 光に色があるわけではない。 光の違いは波長の違いであり,そして波長は色ではない。 あなたは波長 700nm の光に赤色を見るが,他のひと/生き物がその光に見ている「赤色」と同じかどうかは,わからない。 「光の色」とは,その光に照らされた者のその光に対する生理的反応であるとしか言えない。 生物学のテクストは,カラスの黒を「羽毛の中に散在するメラニン色素」で説明する。 しかし「メラニン色素」は,他の生物の様々な色の説明に使われる。 赤にも黄にも青にも。 色素というものは,これ自体に色があるわけではないのである。 言えることは:
カラス学としては,カラスの黒について,これ以上のことを言いたい。 しかし,ここまでのようである。 「色」を科学することは難しいのである。 |