Up | <食べ物>での夫婦関係 | 作成: 2019-04-10 更新: 2020-05-12 |
ボソ01 の観察を始めてからこの関係が見えてくるまで,だいぶ時間がかかった。 餌を置いて,♂♀を誘う。 ♂♀が来る。 ♂は,♀を制して餌を取る。 即ち,カラスの小集団が餌の取り合いをする様を,ボソ01♂♀に重ねてしまったのである。 この見方は,いまは間違いであったことがわかっている。 ボソ01♂♀は,採食で競争するのではない。 ここにはルールが存在している。 ボソ01の<食べ物>に対する行動は,つぎのものが区別される: 「餌をさがして食べる」は,個々勝手な行動である。 「♂が♀に食べ物を直接与える」は,繁殖期に観察される。 親が子どもに口移しで食べ物をやるように,♂が♀に食べ物を与える。 「貯食する」「貯食しておいた食べ物を食べる」は,つぎの2つが区別される: ♂は,食べ物を管理する役を務めている。 管理の方法は,《貯食し,後から♀が食べるのを許す》である。 ♀に餌を投げ与えると,♂は急いでそれを取りに行く。 いまはこれを,「勝手に食べるな!」と♂が言っていると解釈している。 ♀が♂に取られないよう餌をすばやく口にとってしまうと,♂はさらに取り返そうとはしない。 いまはこれを,「しょうがねえな」と♂が舌打ちしていると解釈している。 ♂が貯食した後,♀がそれをもらおうと貯食の場所に向かうのを,♂が「まだ食べたらダメ」というふうに制する場面が,しばしば観察される。 ♂の貯食を♀が食べに来るのは,ふつう♂がいないときということになる。 ボソ01の観察を始めて間もないうちは,《♂の目を盗んで》というふうに見てしまっていたのだが,いまは《食べてもいい頃合──♂が許してくれる頃合》なのだと解釈している。 ♀が餌を食べる様は,♂に比べて雑・ぞんざいである。 ♂がていねいに処理するのに対し,♀は一口でバクッと食べてしまうというふう。 これなども,《♂は食べ物の管理役,♀はもらう立場》に理由があるように思われてくる。
|