Up カラスに対するあらぬ疑い 作成: 2019-01-13
更新: 2019-01-13


    カラスの(くちばし)は,人を攻撃しそうに見える。
    足の爪も,人を攻撃しそうに見える。
    よって,ひとのカラスに対する第一印象は,「なんだか恐そう」である。

    カラスの嘴や爪に恐怖を感じてしまうのは,刃物の先に恐怖を感じる類である。
    所謂「先端恐怖症」というやつである。
    カラスの嘴は,攻撃のためのものではない。
    人間が指で物を扱うことを,カラスは嘴で行う。

    また,カラスに対する印象には,「油断できない」もある。
    ひとの物を取っていきそうな気がするのである。
    例えば, 「外に幼児の履き物を出していたら,それをつかんで持っていってしまうのではないか」みたいな。

    カラスの場合,物を摑んで飛ぶいうことは,ない。
    カラスの足は,猛禽類のそれとは違って,握力がない。
    あわせて,カラスの体重を思ってみよ。
    ハシボソガラスで 500〜700グラム,ハシブトガラスで 550〜750グラムである。

    ちなみに,電線にとまっている鳥は,電線を握力を以て摑んでいるのではない。
    脚の筋肉の構造が,脚を曲げると足がギュッと丸まる構造になっているのである。
    (「脚を曲げる」は,人間の感覚だと「膝を曲げる」だが,鳥だと「かかとを曲げる」になる。)



    カラスは,《相手を攻撃して倒し,食する》というタイプの生き物ではない。
    カラスが捕食する生き物は,蟲の類であり,<飲み込む>が捕食の形になるものである。

    翻って,飲み込めるサイズより大きな生き物にカラスが挑んでいるように見えるシーンがあるとすれば,それは相手がすでに死んでいるか,死にかけているか,あるいは何も抵抗できない (ひどく衰弱しているとか,幼いとか),といった場合になる。