Up 肥料の大量消費とサバク化の関係 作成: 2024-03-24
更新: 2024-03-24


    農業は,肥料を要する。
    特に,窒素肥料を大量に要する。
    なぜ?

    生物の体は,タンパク質でできている。
    タンパク質をつくっている元素に窒素があり,生体材料においては窒素の重量比が 16% くらいになる。
    作物の収穫は,窒素の回収である。
    そして肥料の窒素化合物は,土壌の下へ脱けていったり,風雨によって外に流されたりして,畑からコンスタントに失われる。

    無くなった窒素は,補わなければならない。
    窒素施肥は,農業の宿命である。
    農業は,窒素施肥をいろいろ工夫してきた。


    日本の場合だと,無機肥料が出てくる前は,下肥 (人の糞尿) や魚粕が重要な肥料になった。
    北海道のニシンは,鯡粕(にしんかす)肥料が目的で乱獲され,特に一網打尽漁法の開発によって,「幻の魚」になった。

      ちなみに,近年のイワシ,サンマの不漁も,乱獲のためである。
      ──いまの流行で,これも「地球温暖化」のせいにしているが。


    それから窒素肥料は,無機肥料の時代になる。
    20世紀初頭までは,チリで発掘の硝酸ナトリウム(チリ硝石)が使われた。
    (ここにも「サバク化」のネタはあるが,話を逸らさないために,ここでは触れない。)
    そしてつぎに「アンモニア合成」が開発され,いまに至る。

    アンモニア合成は,空中の窒素をアンモニアの形で固定する技術である。
    ここで,「空中の窒素はタダだから,アンモニア合成はエコだ」と思ってはならない。
    アンモニアは,窒素と水素の化合物。
    水素は,化石燃料をじゃんじゃん燃やしてつくる。
    プラントを動かす電力も,化石燃料をじゃんじゃん燃やしてつくっている。

      物事には「エネルギー保存則」というのがあって,「タダ」なんてものは存在しないのである。
      「エコ」も同じ。──どこかが「エコ」を気取れば,その引き換えにどこかがサバク化している。


    日本は,肥料の大量消費国ではない。
    肥料の大量消費国は,多い順から,中国,インド,米国,ブラジル,‥‥ となる。
    窒素肥料だと,2020年数値で,中国 2565万t,インド 2205万t,米国 1160万t,ブラジル 580万t。 農水省「第23号特別分析トピック:我が国と世界の肥料をめぐる動向 (更新)」2023-05, p.12 の中の数値から計算)

    しかしこれを「日本は慎ましい」と思ってはならない。
    日本は,食糧の大量輸入国である。
    日本は,慎ましいのではなく,いいとこ取りをしているのである。