Up 過生産 作成: 2024-03-23
更新: 2024-03-23


農水省「世界の食糧需給の動向」, 2021-03, p.7 から引用:



    収穫面積は,1960年からさほど変わっていない。
    生産量の<3倍以上>は,単収の<3倍近く>で実現している。

    ひとは,60年間で単収が3倍になっていることを聞くと,生産技術の「改良」の賜と受け取る。
    ひとにとって,増えることは良いことだからである。

    何か増えることは,かわりに何かが減っていることである。
    ひとは,このトレードオフに考えが及ばない。

    単収が増えているのは,つぎの2つのことをやっているからである:
    1. 土壌を酷使する
    2. 「品種改良」の題目で,作物の人工化を進める


    土壌の酷使は,土壌劣化,そして不毛化 (サバク化) へと進む。
    「60年間で単収が3倍」は,土壌劣化との引き換えなのである。
    そして,既にサバク化と引き換えている所もある。

    では,作物の人工化の方は,どこへ進むのか?


    作物の人工化が向かう先は,化学肥料だけで育つ作物である。
    そして化学肥料だけで育つ作物の先に展望されてくるのが,土壌無しの水栽培である。
    農業が企業化できないのは,土壌が扱いに面倒だからである。
    水で済めば,農業は企業化できる。

    作物の人工化とその生育環境の人口化の問題は,「それは果たして食糧なのか?」である。
    ひとは口に入るものは食糧だと思う。
    しかし,食糧かどうかは,体がこれをどう受けつけるかという問題なのである。

    人工化を突き進む作物栽培は,腸内微生物が欲しているものを欠いている可能性がある。
    そのときは,腸内生態系が壊れ,体はアレルギー症状を多発するようになる。
    そしてひとは,そのアレルギー症状が何であるのかわからない。

      アレルギー症状は,生活習慣を改めることで治すものである。
      しかしひとにとってアレルギー症状は,薬で治すものである。


    ひとは,土を粗末にする。
    土を粗末にするのは,そもそも土が嫌いだからである。
    土が嫌いなのは,蟲がうようよしているところだからである。

    実際,ひとは全般に,蟲がうようよしていることが嫌いである。
    除虫剤・除菌剤を使って,蟲をゼロにしようとする。

    ひとは,自分ではそう思っていないが,サバクを求めている。
    食べ物にも,サバクを求めている。

    サバク化は,ひとの無知が導いているというより,ひとの嗜好が導いていると考えた方が,当たっているのかも──である。