Up | 中国北部緑地の高速消滅の理由 | 作成: 2024-05-16 更新: 2024-05-16 |
即ち,「地元から数年間離れそして戻って来たら,大地の緑が無くなっていた」というレベルのサバク拡大が進行している。 このレベルになると,もう「森林伐採・過耕作・過放牧」とか「風食・水食」の話ではない。 「サバク化阻止・緑化事業」の話ではない。 そのサバク化は,サバク拡大のスパイラルに入っており,サバクの拡大するに任せるしかなくなっているのである。 サバク拡大は,《条件が充足されると,ある契機で一気に拡大スパイラルのモードに入る》というものである。 「条件」とは? 砂の多さである。 大きな砂サバクは,風によって大量の砂が吹き上げられ飛ばされる。 それが,周りの土地に降る。 この降砂がその土地をサバクにしていく。 中国の場合,タクラマカン砂漠,ゴビ砂漠,黄土高原が「砂を供給する大サバク」である そして内モンゴル地区が,「緑が失われる速さが目に見えるほど」になっているというわけである。 砂に降られる土地は,なぜ緑を失うのか? 先ず,1年生植物が無くなる。 種子をつくる前に砂を被れば,その代で終わりである。 種子を遺しても,種子発根が土壌に届かない。 残るのは,多年生植物。 しかしこれも,種子繁殖はダメになる。 砂を被った分,地面の露出が増える。 日照による地表の温度上昇が大きくなり,乾燥化が進む。 こうして,乾燥に弱い植物が無くなる。 残ったのは,根・地下茎を土中深くに張るタイプの多年生植物。 以上の植生変化で,「大地の緑が無くなった」の風景になる。 浜辺の植生は緑が少なく見えるが,それと同じである。 そしてその地は,砂が降って積もる一方。 こうして,徐々に砂サバクへと変貌していく。 ここでの要点は,大きなサバクから飛んでくる砂が多く降る地は,砂サバクに変貌するまでの時間は長くとも,緑を失うのはすぐだということである。 緑を失った地の緑化事業は,成らない。 緑化の中心は1年生雑草の繁殖ということになり,そしてこれは,ひとが事業としてやる/できることではないからである。 |