Up サバク化は<ゆっくり進行>ができない 作成: 2024-05-12
更新: 2024-07-09


    サバク化とは,生態系が壊れていくことである。

    壊れていく生態系には,土壌生態系が含まれる。
    生態系が豊かなところは,土壌生態系も豊かである。
    そのような生態系では,植物の<生える>は<土壌生物との共生>になっている。


    生物は,<命をつなぐ>をする存在である。
    この<命をつなぐ>の含意に,<環境に適応する>がある。
    生物がもつこの能力のために,「ゆっくり進行するサバク化」というものは無い。
    <生物をゆっくり滅ぼす>は,生物の環境適応のスピードに負けるからである。
    サバク化が成るためには,<生物を滅ぼすスピード>が<生物が環境に適応するスピード>を上回らねばならない。

    「ゆっくり進行するサバク化」というものは無いから,特に,気候変動が理由のサバク化というのは無い。
    気候変動は,きわめてゆっくり進行するものだからである。
    たとえば氷期・間氷期は,周期が10万年くらいで,気温変化の振幅が10度くらい。
    このくらいゆっくりだと,生態系はこの変動に適応することになり,生態系はほぼ保たれる──サバク化は起こらない。

    サバク化をもたらすのは,生態系を短期間に滅ぼすものである。
    それはどんなものか?
    地球の活動だったら,火山噴出物の堆積の類。
    あるいは,草食動物の爆発的増加。
    そしていま最も顕著なのが,人間による生態系の破壊というわけである。


    しかしひとは,「サバク化はゆっくり進行することができない」に考えが及ばない:
      Wikipedia「サハラ砂漠」
    サハラ一帯は、完新世(1万年前〜現在)以降は湿潤と乾燥を繰り返してきた。
    2万年前から1万2000年前はサハラ砂漠がもっとも拡大した時期で、現在のサヘル地帯のほとんどがサハラ砂漠に飲み込まれていた。
    その後最終氷期の終焉とともにサハラは湿潤化を開始し、およそ8000年前にもっとも湿潤な時期を迎えた。
    この時期の砂漠はアトラス山脈直下の一部にまで縮小し、サハラのほとんどはサバンナやステップとなり、森林も誕生した。
    7500年前に一時乾燥化したがすぐに回復し、5000年前までの期間は湿潤な気候が続いた。
    その後、徐々に乾燥化が始まり、以来現在にいたるまでは乾燥した気候が続いている。
    5000年前と比べると砂漠の南限は1,000キロメートルも南下している。

    ひとは,<変化>を極大・極小点で捉える。
    つぎに点と点の間を直線で結ぶ。
    こうして,「徐々に乾燥化が始まり」の表現になる。

    彼らが点と点の間を直線で結ぶのは,生態系を知らないからである。
    生物を知らないからである。

    乾燥化は,サバク化 (豊かな生態系の崩壊) と連動している。
    この乾燥化は,徐々に起こることはできない。
    短期間で変化するという形で,それは成る。
    長い時間が縮小された湿潤度推移グラフでは,乾燥化は乾燥点の直前でほぼ垂直に跳び降りる形になる。
    湿潤点と乾燥点を結ぶ傾斜を歩く形にはならない。

    一方,湿潤化は豊かな生態系の再生と連動している。
    この変化は,長い時間がかかるものになる。
    そして,再生した生態系のサイズに変化率が比例する格好になる。

    湿潤のステージは,生態系を破壊する事件が起こらない間は,持続する。
    こうして,湿潤度推移グラフは,およそつぎの形になる: