Up | 「環境アセスメント法」の意味 | 作成: 2022-04-04 更新: 2022-04-04 |
ひとは「環境アセスメント法」のことばを聞くと,自然環境を大切にするための法だと思う。 事実は,その真逆である。 政治は,問題のある法を通すとき,内容とは真逆のネーミングをする。 これは政治の常套なので,よく覚えておくとよい。 大規模な土木・建設事業は,必ず自然破壊になる。 自然破壊は,その自然を大切にしている地元が反対するものになる。 地元の言うことを聞いていたら,大規模な土木・建設事業はまったくできないことになる。 そこで,「成長戦略」で意気盛んな当時の政府は,地元の反対に構わず土木・建設事業ができるようにする法律をつくった。 それが,「環境影響評価法 (環境アセスメント法)」である。 この法律により,事業者は「経産省に計画を提出すればよく、立地市町村へは不要」「地元に対しては住民説明会を1回開催すればよい」となる。 これによってどうなるか? 上の記事に書かれているようなことが,つぎつぎ起こるということになる。 今回は,事業者のやり方が余りに露骨 (下手くそ) だったので咎められたというだけのことであって,少しも特別なことではない。 読売新聞の「「太陽光」カギは住民理解」のココロは,「太陽光発電事業にプライオリティがある──最後は住民が譲るべき」である。 山林破壊を地元住民が理解することは,無い。 山林破壊をする者は,彼らにとって山林は無価値のものだから,破壊する。 山林を守ろうとする地元住民は,彼らにとって山林が大切なものだから,破壊に反対する。 両者の間に折り合いは存在しない。 勝負をつけるのは強権であり,強権はアセス法に守られた事業者の側にある。 自治体の条例は,法律の範囲内のことしか定められない。 「施設建設を計画する事業者に計画の届け出や住民との協議を義務づける」を定めても,事業者の自然破壊を止めるものにはならない。 実際,事業者から自治体に届け出がされたからといって,自治体がそこから何かできるわけではない。 「住民との協議」といっても,「住民説明会」と何かが違ってくるわけではない。 この種の自治体の条例に対しては,むしろ<自治体の無力を隠蔽する効果>に警戒することが,肝要である。 実際,この世の趨勢は,読売新聞が謳う「「太陽光」カギは住民理解」の調子で,自然破壊が進むことになる。 現代人は,自分ではそうは思っていないが,自然が嫌いなのである。 町内の公園は,なぜ裸地なのか? 住民が,雑草や落ち葉を汚いとするからである。 雑草や落ち葉を,虫や菌が湧いて不潔だとするからである。 現代人は,町がコンクリートとアスファルトで覆われているのが好きなように,山は金属光沢の太陽光パネルで敷き詰められているのが好きなのである。 「開拓者」を想うべし。 彼らは,木をすっかり伐採できた後の更地を,ことのほか美しく感じた。 「成長戦略」で意気盛んな当時の政府は,この「開拓者」のようなものである。 彼らは,山が金属光沢の太陽光パネルで敷き詰められている風景を,ことのほか美しい風景として夢見る者たちだったのである。 |