Up | 均衡 | 作成: 2015-01-09 更新: 2015-01-12 |
よって,個が生きることは,他の個と折り合っていくことである。 この「折り合い」の系が,生態系である。 生態系は,個の都合が全体で均衡している相である。 「折り合い」の様相は,刻々変化する。 「折り合い」は,動態である。 生態系は,均衡の逐次更新である。 個は,生態系に適応する。 しかしこの「適応」を「個の<生きる>は,生態系を壊さない生き方に落ち着く」と解釈したら,それは間違いである。 生物の「生きる」に「生態系を壊さない」の含意はない。 「自分が生きられる隙間 (ニッチ) を求める」は,「生態系を壊さないように生きる──自分の分をわきまえる」ではない。
生態系の「均衡」を,生体の「動的定常」と混同してはならない。 一般に,系を生き物に模す論は,このタイプの混同をしがちである。 よって,ここで強調しておく。 「動的定常」は,「形の動的保存」の謂いである。 生体の「動的定常」のメカニズムは,「新陳代謝」(要素の入れ換え) である。 要素の入れ換えなので,形が保存される。 一方,生態系の「均衡」は,「形の保存」ではない。 生態系の「均衡」は,物理系の「現前は物理的均衡相」の「均衡」と同種である。 ──物理系の「均衡」は「形の保存」ではない。 |