Up 原発事故版「腐海の秘密」 作成: 2023-07-15
更新: 2023-07-16


      NHK NewsWeb, 2023-07-02
    公明 山口代表“処理水放出の開始 海水浴シーズン避けるべき”
    東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を夏ごろから海に放出する政府の方針について、公明党の山口代表は、いたずらに不安を招かないよう海水浴シーズンの放出開始は避けるべきだという認識を示しました。
     ‥‥  

      日本経済新聞, 2023-07-13
    EU、日本産食品の輸入規制8月めど撤廃 正式発表
    欧州連合(EU)は13日、日本産食品に課している輸入規制を完全に撤廃すると正式に発表した。加盟する27カ国が福島県産の水産物などを対象に続けてきた規制が8月をめどになくなる。
    EUはウクライナに侵攻したロシアとの関係が決定的に悪化した。人権問題などで中国との距離も開いている。インド太平洋で民主主義の価値観を共有する日本との関係を重視する姿勢を示した。
     ‥‥

      ジャカルタ共同, 2023-07-14
    原発処理水が安全なら日本で使えと中国
    インドネシアで14日開かれた東アジアサミット外相会議で、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出の安全性を強調した日本に対し、中国が、安全ならば飲料水として日本国内で使用すればよいと主張したことが分かった。外交筋が明らかにした。  


    原発のメルトダウン事故は当初「悲劇」だが,その後段々と「喜劇」に変わっていく。
    事故処理は不都合のごまかしを,いろいろやっていくことになる。
    このとき下手をやる者が,いろいろ現れる。
    ごまかしに乗じて利益を得ようとする者が,いろいろ現れる。
    ごまかす側の弱みをかけひきに使おうとする者が,いろいろ現れる。
    こうして,当初の「悲劇」は消し飛んでしまうのである。


    メルトダウン事故は,起きてしまえば<放置>するしかないというものである。
    曝露した核崩壊物質は,包み込みようがないのである。
    上を覆っても包んだことにはならない。
    地面から下は,開きっ放しなのである。
    事故処理は,<放置>にあてがう手当てであって,事故の解決ではない。


    放置された核崩壊物質は,長い時間をかけて,段々と無くなる。
    つぎが,これのダイナミクスである:
    1. 核崩壊物質は,核崩壊で安定な物質に変わる
    2. 核崩壊物質は,風に飛ばされたり水に流されたりして,拡散する
    3. 「腐海」生態系が,核崩壊物質の拡散ないし取り込みをする

    核崩壊が放置されたところには,「腐海」生態系が現れる。
    ここでは,それがどんな生態系か考えてみるとしよう。
    「腐海の秘密」を問うというわけである。


    腐海に棲む生物は,体内に核崩壊物質を取り込む。
    特に,食物連鎖によって取り込む。
    この生物は,生活圏を拡散する。
    この拡散は腐海の拡散だが,腐海の拡散は核崩壊物質の希釈である。

      また,腐海生物のなかからは,核崩壊物質をエネルギー代謝に使うものが現れるかも知れない。
      生物の進化は,底が知れない。
      かつて生物にとって酸素は猛毒であったが,生物はこれをエネルギー代謝に使うように進化した。
      核崩壊物質も,この酸素と同様に考えることになる。


    腐海の核崩壊物質は,腐海生物が体内に取り込む分だけ,減る。
    そこで,つぎの問題が立つ:
      腐海生物は,腐海を浄化できるか?
      ──即ち,腐海の核崩壊物質をすべて体内に取り込めるか?


    原発1基の核燃料がすべて曝露したとする。 原発1基の核燃料のウラン (ウラン235) 重量は,9.73. トンと計算される。 つぎが,この計算:

      核燃料の量は,「燃料集合体がn個」で表現される。
      燃料集合体は,燃料棒 264本である。
      燃料棒は,ウランペレット 320 個である。

      ペレットは,PWR では直径0.8 センチ・高さ1 センチ程度,BWR では直径・高さとも1センチ程度の,円柱。
      そしてこれの4%がウラン。

      ペレットを「直径・高さとも1センチ」とすると,ペレットの体積は
        ( 0.52 × π ) × 1 = 0.785 cm3
      そしてこれの 4% がウランの体積:
        0.785 × 0.04 = 0.0314 cm3

      燃料集合体は,ペレットが
        320 × 264 = 84480  個
      よって,原発1基のウランの体積は:
        0.0314 × 84480 × n = 2653 × n cm3

      ウランの重さを 19 g/cm3 とすると,原発1基の核燃料のウラン重量は,
        19 × ( 2653 × n ) g = 50400 × n g

      nはどのくらい?
      「燃料集合体 193体 = ペレット 1,630万 (= 84480 × 193) 個」の文言を見かけるので,
        n = 193
      としよう。
      こうして,原発1基の核燃料のウラン重量は,
        ( 50400 × 193 ) g = 9727000 g = 9727 kg = 9.73. トン


    地球生物の総重量を,仮に1兆トンとしよう。
    地球生物の1万分の1が腐海生物になるとすると,腐海ウランをすべて体内に取り込むには,1個体が体重の 0.00000973 % (約1千万分の1) の重さだけウランを取り込めばよい:
      このときの腐海生物の総重量は1億トン。
      この重量に対するウランの重量 9.73 トンの割合は,
        9.73 ÷ 1億 = 0.0000000973 = 0.00000973 %
    地球生物の 100万分の1が腐海生物になる場合だと,0.000973 % (約10万分の1)。

    この数字は,「腐海生物は腐海を浄化する」を示すように見える。
    もちろん,腐海生物は放射線にやられて短命になる。
    しかし,短命のうちに繁殖を果たすようになる。
    腐海生物による核崩壊物質の体内取り込みが,食物連鎖と繁殖によって,代々受け継がれる。 ──この形を以て,腐海生物による核崩壊物質の体内取り込みが,保たれる。
    そして腐海生物の体内で,核崩壊物質が少しずつ安定な物質に変わっていく。

    これが,腐海浄化のメカニズムである。
    「腐海の秘密」である。


    腐海浄化は,地球時間スケールの壮大なストーリーである。
    (ウラン235 の半減期は7億年!)
    原発事故を一通り起こした後は,このストーリーに人間の出る幕は無い。