Up | 原発事故版「腐海の秘密」 | 作成: 2023-07-15 更新: 2023-07-16 |
原発のメルトダウン事故は当初「悲劇」だが,その後段々と「喜劇」に変わっていく。 事故処理は不都合のごまかしを,いろいろやっていくことになる。 このとき下手をやる者が,いろいろ現れる。 ごまかしに乗じて利益を得ようとする者が,いろいろ現れる。 ごまかす側の弱みをかけひきに使おうとする者が,いろいろ現れる。 こうして,当初の「悲劇」は消し飛んでしまうのである。 メルトダウン事故は,起きてしまえば<放置>するしかないというものである。 曝露した核崩壊物質は,包み込みようがないのである。 上を覆っても包んだことにはならない。 地面から下は,開きっ放しなのである。 事故処理は,<放置>にあてがう手当てであって,事故の解決ではない。 放置された核崩壊物質は,長い時間をかけて,段々と無くなる。 つぎが,これのダイナミクスである: 核崩壊が放置されたところには,「腐海」生態系が現れる。 ここでは,それがどんな生態系か考えてみるとしよう。 「腐海の秘密」を問うというわけである。 腐海に棲む生物は,体内に核崩壊物質を取り込む。 特に,食物連鎖によって取り込む。 この生物は,生活圏を拡散する。 この拡散は腐海の拡散だが,腐海の拡散は核崩壊物質の希釈である。
生物の進化は,底が知れない。 かつて生物にとって酸素は猛毒であったが,生物はこれをエネルギー代謝に使うように進化した。 核崩壊物質も,この酸素と同様に考えることになる。 腐海の核崩壊物質は,腐海生物が体内に取り込む分だけ,減る。 そこで,つぎの問題が立つ:
──即ち,腐海の核崩壊物質をすべて体内に取り込めるか? 原発1基の核燃料がすべて曝露したとする。 原発1基の核燃料のウラン (ウラン235) 重量は,9.73. トンと計算される。 つぎが,この計算:
燃料集合体は,燃料棒 264本である。 燃料棒は,ウランペレット 320 個である。 ペレットは,PWR では直径0.8 センチ・高さ1 センチ程度,BWR では直径・高さとも1センチ程度の,円柱。 そしてこれの4%がウラン。 ペレットを「直径・高さとも1センチ」とすると,ペレットの体積は
燃料集合体は,ペレットが
ウランの重さを 19 g/cm3 とすると,原発1基の核燃料のウラン重量は,
nはどのくらい? 「燃料集合体 193体 = ペレット 1,630万 (= 84480 × 193) 個」の文言を見かけるので,
こうして,原発1基の核燃料のウラン重量は,
地球生物の総重量を,仮に1兆トンとしよう。 地球生物の1万分の1が腐海生物になるとすると,腐海ウランをすべて体内に取り込むには,1個体が体重の 0.00000973 % (約1千万分の1) の重さだけウランを取り込めばよい:
この重量に対するウランの重量 9.73 トンの割合は,
この数字は,「腐海生物は腐海を浄化する」を示すように見える。 もちろん,腐海生物は放射線にやられて短命になる。 しかし,短命のうちに繁殖を果たすようになる。 腐海生物による核崩壊物質の体内取り込みが,食物連鎖と繁殖によって,代々受け継がれる。 ──この形を以て,腐海生物による核崩壊物質の体内取り込みが,保たれる。 そして腐海生物の体内で,核崩壊物質が少しずつ安定な物質に変わっていく。 これが,腐海浄化のメカニズムである。 「腐海の秘密」である。 腐海浄化は,地球時間スケールの壮大なストーリーである。 (ウラン235 の半減期は7億年!) 原発事故を一通り起こした後は,このストーリーに人間の出る幕は無い。 |