Up 生体に有利に働く場合 作成: 2018-08-17
更新: 2018-08-17


  • 拮抗現象 antagonism
      戸田忠雄 (1939), pp.175-178
    人体各所における常在微生物の数や種類は,
      栄養源の得やすさ,
      宿主の分泌する各種の抗微生物因子の存在,
      酸素分圧
    などのほか,
      微生物どうしの相互作用 (発育に必要な栄養素摂取の競合,他の菌の発育を阻害する物質の産生,あるいは粘膜表面への定着をめぐっての競合など)
    など,種々の要因によって影響を受ける。
    したがってすでにできあがって平衡状態を保っている場所に,新たな病原菌が侵入してきても,常にその場所に定着し感染を成立させうるとはかぎらない。
    ところが,抗生物質の大量投与などによりこの平衡状態が崩れると,その抗生物質に影響されない細菌や真菌などが隙問を埋める形で異常に増殖し,感染がひき起こされることがある
    このような例としてはブドウ球菌や Clostridium difficile による腸炎やカンジダ症などが有名であり,菌交代症として知られている.


  • 免疫系刺激作用
      戸田忠雄 (1939), pp.175-178
    常在微生物をまったく有しない無菌飼育動物においては,一般に体液中の免疫グロブリンの量は低く,また細胞免疫も低いレベルにあるといわれている。
    常在細菌の存在はこれらの免疫系を刺激し,免疫応答能力や感染抵抗性の付与に役立っている.


  • 発膏素産生
      戸田忠雄 (1939), pp.175-178
    常在微生物とくに腸管に生息する菌のあるものは,その代謝の結果ビオチン,リボフラビン,ニコチン酸,パントテン酸,ピリドキシンなどを産生しており,その一部は宿主である動物に利用されている。
    したがって抗生物質の長期投与によりビタミン不足が起こることがある。



  • 参考/引用文献
    • 戸田忠雄 (1939) :『戸田新細菌学』, 南山堂, 1939
      • 第34版 : 吉田眞一・柳雄介・吉開泰信[編]『戸田新細菌学』, 南山堂, 2013

  • 参考 Webサイト