Up 機能性食品 作成: 2022-01-28
更新: 2022-01-28


      腸内細菌学会 用語集「バイオジェニックス (biogenics)」
    食品には
       栄養機能(一次機能)、
       風味・嗜好機能(二次機能)、
       疾病予防などの体調調節機能(三次機能) がある。
    「体調調節機能」とは、
       生体防御(アレルギー低減化、免疫賦活等)、
       疾病予防と回復(高血圧、糖尿病予防、先天性代謝異常予防等)、
       体調リズムの調節(神経系調節、消化機能調節、内分泌系調節等)、
       老化抑制(過酸化脂質生成抑制等)
    などの作用があげられる。
    体調調節機能をもった食品は,機能性食品と呼ばれ、その作用メカニズムの観点から、プロバイオティクス(probiotics)、プレバイオティクス(prebiotics)、バイオジェニックス(biogenics)の3つに分けられる。
    「プロバイオティクス」は、「生菌として摂取し、腸内フローラのバランスを改善し、健康に有利に働く細菌や酵母」で、乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌、酪酸菌などの生菌やヨーグルトなどの発酵乳や乳酸菌飲料がこの範疇に入る。
    「プレバイオティクス」は、腸内フローラのバランスを改善する難消化性食品成分」で、オリゴ糖、食物繊維、B.G.S.などがこれに該当する。
    「バイオジェニックス」は、「腸内フローラを介することなく、直接生体に作用し、
       免疫賦活、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用、抗腫瘍効果、抗血栓、造血作用などの生体調節、生体防御、疾病予防・回復、老化制御
    などに働く食品成分で、
       乳酸菌体ペプチド、乳酸菌生産生理活性ペプチド、植物フラボノイド、DHA、EPA、ビタミンA・C・E、β-カロチン、CPPなどの食品成分
    が該当する。


      腸内細菌学会 用語集「プロバイオティクス (probiotics)」
    プロバイオティクスとは、アンチバイオティクス(抗生物質)に対して提案された用語であり、共生を意味するプロバイオシス(probiosis、pro:共に、〜のために、biosis:生きる)を語源としている。
    Fuller(1989)により「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」と定義され、これが現在でも広く受け入れられている。
    プロバイオティクスの候補としては乳酸菌やビフィズス菌が有名だが、以下のような条件を満たすことが科学的に証明された特定の菌株に限り、プロバイオティクスと考えられている。
    プロバイオティクスの条件
       1. 安全性が保証されている
       2. もともと宿主の腸内フローラの一員である
       3. 胃液、胆汁などに耐えて生きたまま腸に到達できる
       4. 下部消化管で増殖可能である
       5. 宿主に対して明らかな有用効果を発揮できる
       6. 食品などの形態で有効な菌数が維持できる
       7. 安価かつ容易に取り扱える
    プロバイオティクスの持つ有益な効果として、便秘および下痢症の改善効果、乳糖不耐症の改善効果、免疫機能改善による感染防御・アレルギー抑制効果、動脈硬化の予防効果、抗腫瘍作用などが報告されている。
    本邦では、特定保健用食品制度があり、科学的な証明に基づいてその機能の表示が許可された発酵乳商品が販売されている。
    近年、よりエビデンス・レベルの高い無作為化プラセボコントロール試験がその評価に用いられるようになっており、従来にも増してプロバイオティクスの科学性が重要視されている。


      腸内細菌学会 用語集「プレバイオティクス (prebiotics)」
    プレバイオティクスという言葉は、1994年のILSI Europe主催の「腸内菌叢:栄養と健康」と題するワークショップでGibsonとRoberfroidにより提唱され、翌年に彼らにより執筆された総説(Gibson GR, Roberfroid MB. 1995. Dietary modulation of the human colonic microbiota: introducing the concept of prebiotics. J Nutr 125:1401-1412)の中で詳細に説明されている。
    プレバイオティクスという用語は、有害な病原性細菌を抑制する抗生物質(antibiotics)に対して考案された。
    すなわち、プレバイオティクスは大腸内の特定の細菌の増殖および活性を選択的に変化させることより、宿主に有利な影響を与え、宿主の健康を改善する難消化性食品成分と定義した。
    プレバイオティクスに要求される条件は以下の通り。
    1. 消化管上部で加水分解、吸収されない。
    2. 大腸に共生する一種または限定された数の有益な細菌(ビフィズス菌等)の選択的な基質であり、それらの細菌の増殖を促進し、または代謝を活性化する。
    3. 大腸の腸内細菌叢(フローラ)を健康的な構成に都合の良いように改変できる。
    4. 宿主の健康に有益な全身的な効果を誘導する。
    食品成分の中では難消化性のオリゴ糖類が最もよく利用されており、その他としてはプロピオン酸菌による乳清発酵物などがある。
    プレバイオティクスの機能性については、整腸作用(便通改善)、抗脂血作用、インスリン抵抗性の改善、ミネラル吸収促進作用、尿中窒素低減作用、大腸がん・炎症性腸疾患の予防・改善、アレルギー抑制作用、腸管免疫の増強等が報告されている。
    またオリゴ糖類のプレバイオティクスの多くは難消化性糖質であることから低カロリーでもある。
    プレバイオティクスのほとんどの機能性は大腸での腸内細菌叢の変化を介して発現されると考えられている。