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戸田忠雄 (1939), pp.175-178
動物は胎内に存在するときは通常無菌的である (胎盤を通じて感染する能力をもつ微生物も一部には存在するが)。
しかしいったんこの世に生まれてくると,ただちに各種の微生物の定着が始まり,とくに皮膚や粘膜など外界と接する部分には一定の微生物群 (圧倒的多数は細菌であるが,真菌,ウイルス,原虫なども存在する) が認められるようになる。
これらの微生物群は一括して常在微生物叢 indigenous microbial flora (または microbiota) とよばれ,いろいろな影響を宿主である動物に与えることになる。
細菌だけをとりあげる場合には,常在細菌叢あるいは正常細菌叢 normal bacterialfloraという言葉も用いられる。
この常在微生物叢を構成する微生物の種類や数は,個人により,また身体の各場所により異なり,また同じヒトでも時問的な変動が認められ,必ずしも一定不変ではない。
ただし,腸管における大腸菌や Bacteroides,口腔内におけるα溶血性あるいは非溶血性のレンサ球菌,皮膚の表皮ブドウ球菌などのようにほとんどすべての人問にコンスタントに存在するものが多い。
しかし一方では鼻前庭部における黄色ブドウ球菌のように必ずしもすべての人問から分離されるとは限らないものも存在する,
これらの常在微生物は通常は宿主に目に見える形での害を与えず,むしろ相利共生の状態にあり,他の病原菌の侵入を防ぐなどの利益を与えているが,一方では宿主の抵抗力が落ちたときには内因感染の原因になるなどの不利益ももたらしている,
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同上, pp.175-178
ヒトは胎内では原則的に無菌の状態にあるが,出産時に母親の産道でまず微生物の汚染を受け,その後環境からの汚染がさらに加わり,生後きわめて早い時期から微生物叢の定着が始まる。
身体各所における常在細菌の種類を以下に示すが,その様相は,性,年齢,生活環境,食事内容などによっても異なる.
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- 参考/引用文献
- 戸田忠雄 (1939) :『戸田新細菌学』, 南山堂, 1939
- 第34版 : 吉田眞一・柳雄介・吉開泰信[編]『戸田新細菌学』, 南山堂, 2013
- 参考 Webサイト
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