|
戸田忠雄 (1939), pp.175-178
正常の膀胱は無菌であるが尿道下部には少数の菌が認められる。
Streptococcus, Enterococcus, E.coli を中心とする腸内細菌科,Bacteroides,場合によってはMycobacterium などが検出される。
注意して採取された正常尿中の細菌数は 104/ml 以下であり,105/ml 以上であれば感染が起こっていると判断される。
尿路感染の原因菌としては (カテーテルなどによる院内感染を除けば) 大腸菌がもっとも多いが,これは糞使からの汚染による。
膣内の細菌叢は性ホルモンによる影響を強く受けている。
出産直後は母親からのエストロゲンの影響によりグリコーゲンが蓄積しており,Lactobacillus が定着し pH を酸性にするが,その後グリコーゲンは減少し pH が中性ないしアルカリ側に傾くと,Staphylocoss, Strepococcus, Corynebacterium 類縁菌などが検出されるようになる。
思春期になると再び性ホルモンの影響を受けて上皮細胞ヘグリコーゲンが蓄積するようになり, Lactobacillus が優勢となる。
この Lactobacillus はデーデルライン Doder1ein の膣桿菌ともよばれ,膣内容を酸性にするため多くの病原微生物の発育抑制に役立っているといわれ,これを腔の自浄作用という。
そのほか少数ではあるが,Micrococcus, Staphylococcus epidermidis, Candida albicans などが見いだされる。
妊娠中の女性の10〜15%にはB群レンサ球菌であるS.agalactie が認められるが,ときとして新生児の敗血症や髄膜炎を起こす原因となる。
また Candida albicans が異常に増殖して炎症を起こすこともある。
さらに Mycoplasma, Ureaplasma,原虫である Trichomonas vaginalis なども場合によっては認められる。
外陰部は湿潤であるため,かなりの細菌が認められる。
とくに女性の場合は腸内のフローラによって汚染されやすい。
恥垢には Mycobacterum smegmatis が存在する.
|
|
|
藤田紘一郎 (2002), pp.178,179
最近「膣炎に悩む女子学生が増えている」という手紙を、婦人科の先生からいただいた。
頻繁にビデを使ったり、石けんで洗ったりすることが原因らしい。
膣内を酸性にして守っているデーデルライン乳酸菌という細菌を、洗いすぎで追い出していると考えられるのだ。
日本の女性はこれまでビデで膣を洗う習慣がなかったが、最近の温水洗浄トイレの普及で、たびたびビデを使うようになった。
おしっこに行くたびにビデで洗う若い女性も出てきている。
また、清潔志向の高まりとともに膣を石けんで洗ったりする人たちも出てきた。
洗うときれいになる、と思っている人が多いが、洗いすぎると汚くなるのだ。
ビデで膣を洗いすぎたり、石けんで洗ったりすると、膣炎が起こることがある。
女性の膣にはデーデルライン乳酸菌が常在していて、きれいに守っている。
デーデルライン乳酸菌は膣のグリコーゲンを餌にして、乳酸をつくっている。
したがって正常な膣は「酸性」なのだ。
酸性なので、膣の中に雑菌が入ってきても増殖できない。
しかし、洗いすぎると膣のデーデルライン乳酸菌を追い出してしまう。
そうすると、デーデルライン乳酸菌のいない膣は「中性」となり、雑菌がたやすく増殖するようになる。
おりものが増えて、いやなにおいを発するようになる。
これが膣炎だ。
つまり、洗いすぎると「汚くなる」のだ。
|
|
- 参考/引用文献
- 戸田忠雄 (1939) :『戸田新細菌学』, 南山堂, 1939
- 第34版 : 吉田眞一・柳雄介・吉開泰信[編]『戸田新細菌学』, 南山堂, 2013
- 藤田紘一郎 (2002) :『バイ菌だって役に立つ──清潔好き日本人の勘違い』(講談社+α文庫), 講談社, 2002.
- 参考 Webサイト
|