Up 肺胞の風邪免疫システム 作成: 2022-03-13
更新: 2022-03-13


    風邪は,ウイルスに鼻で感染すれば鼻風邪 (鼻炎),喉で感染すれば咽頭炎,気管支で感染すれば気管支炎,そして肺胞で感染すれば肺炎,というぐあい。

    鼻風邪は,ふつうのことである。
    ──気づかないほどであれば,「無症状」ということになる。
    「軽症」は,咽頭炎・気管支炎から。
    そして肺炎は,「重症」扱い。

     註: 新型コロナの PCR検査は,鼻の粘膜を取って検査にかける。
    陽性が出たら「新型コロナに感染」と言っているが,この検査で言えることは,鼻で感染しているかどうかまで。
    実際,検査で陽性が出る者は「無症状」がふつうだが,これが示すことは,鼻風邪レベルがふつうだということである。
    新型コロナの重症は,慢性炎症疾患者と高齢者に偏っている。
    これが示すことは,サイトカインストームによる重症が主だということである。


    風邪ウィルスは肺胞にまで到達していることになるが,肺炎はそう簡単には起こらない。
    なぜか?
    ウイルスにとって,肺胞上皮細胞に取り付くことは簡単でないからである。
    上皮細胞は,防御されている。
    そう,常在微生物叢によって防御されている!

    常在微生物叢は,微生物と「土壌」である。
    微生物のうちには,ウイルスを貪食するものがある。
    ウイルスは,微生物の貪食をすり抜け,土を掻き分けて,やっと細胞に取り付く。
    こうして,つぎのどちらの局面でも,ウイルスは勢力をかなり削がれることになる:
    1. ウイルスの最初の侵入
    2. 細胞内で繁殖を果たし細胞から出芽するように出てきたウイルスが,他の細胞にさらに侵入しようとするとき


    免疫学のテクストによれば,免疫反応は白血球によるウイルスの貪食が端緒になる:
     「 ウイルスを貪食した白血球が,抗体生成を誘導するシグナル物質を放出する。
    しかし,白血球によるウイルスの貪食より前に,微生物によるウイルスの貪食がある。
    よって体は,微生物のウイルス貪食において現れる何かを,免疫発動のシグナルにしていることになる。
    ──体とはこういうふうに進化するものである。


    戦争は,始めることより収めることの方がはるかに難しい。
    免疫反応もそうである。
    免疫反応は,これに対する抑制が働かないと,暴走して「自己免疫」と謂う自傷行為に至る。

    免疫学は体を自己充足の精密機械モデルで考えるので,免疫反応を収めるものを「特殊細胞の特殊シグナル」で説明することになる。
    しかしこの説明は,つぎの疑問が返ってくる:
     「 免疫反応が暴走しそうなことが,その特殊細胞にはどうしてわかるのか?

    「免疫反応暴走の抑制」は,「常在微生物叢」で自然に説明される。
    即ち,微生物の餌食になるものには,免疫細胞も含まれてくる。
    免疫細胞の増加には,免疫細胞捕食の増加が応じる。
    こうして,免疫細胞は暴走が抑えられる。

常在微生物叢のイメージ