Up 酸素・二酸化炭素交換メカニズム 作成: 2022-03-13
更新: 2022-03-13


    肺胞は,つぎのことが起こるところである:
    1. 肺胞から血液に,酸素が移動
    2. 血液から肺胞に,二酸化炭素が移動

    肺胞から血液への酸素の移動は,酸素と赤血球の結合である。
    この結合は,つぎの化学反応式で説明される:
      Hb (ヘモグロビン) + O2 → HbO2
    そして血液中の二酸化炭素の方は,つぎの化学反応式で説明される:
      HCO3 + H (重炭酸イオン) → H2CO3 (炭酸) → CO2 + H2O

    赤血球は,酸素を組織細胞に移送することを役割とするものである。
    組織細胞では,上の化学反応式を逆方向にした化学反応が,血液で起きる:
      HbO2 → Hb+ O2
      CO2 + H2O → H2CO3 → HCO3 + H

    ここで,つぎの疑問になる:
      酸素・二酸化炭素の血液中での化学反応はこれでよいとしても,
      肺胞と血液間,組織細胞と血液間の酸素・二酸化炭素の移動の方は,どんなメカニズムになっているのか?


    濃度の差は「拡散」によって,(なら)される。
    というわけで「拡散」がメカニズム?
    しかし拡散は,ひどく時間がかかる。
    「拡散」は,酸素・二酸化炭素交換の説明には使えない。

    説明として流通しているらしいのは,「分圧」を使う説明である:
    • 肺胞内の酸素分圧は100mmHg,肺胞での血液の酸素分圧は40mmHg。
      その差 60mmHg によって,肺胞から血液へ酸素が移動する。
    • 肺胞内の二酸化炭素分圧は 40mmHg,肺胞での血液の二酸化炭素分圧は 45mmHg。
      その差 5mmHg によって,血液から肺胞に二酸化炭素が移動する。
    しかしこれは説明になっているか?

    部屋が2つに仕切られている── 仕切られた2つの空間をA, Bとする。
    Aに男100人女40人を入れ,Bに男40人女45人を入れる。
    ここで仕切りをとる。
    「分圧」のロジックだと,この場合つぎのようになる:
      男は,差60人によって,AからBに流れる。
      女は,差5人によって,BからAに流れる。
    ほんとうにそうなる?

    分子は,《自分と同じ分子を見分け,同じ者同士で交流する》ということはしない。
    酸素・二酸化炭素交換の説明に「分圧」を使うのは,「分圧」の概念の誤用である。
    「分圧」の意味をわかっていないための,粗忽である。


    酸素・二酸化炭素の移動の説明として「分圧」が出回っていることは,つぎのことを意味する:
      酸素・二酸化炭素の移動のメカニズムは,
      まだ全然捉えられていない。