Up 「肺常在微生物叢」試論 : はじめに 作成: 2022-03-09
更新: 2022-03-09


    「新型コロナ」の大騒ぎを観察して,はっきりしたことがある。
    それは,「専門家」はその実ひどくものを知らないのだ,ということである。

    ひとは,ひどくものを知らない。
    しかし,わかったようなことを言う。
    なぜか?
    ひとは,自分の無知がわからないものなのである。

    実際,無知をわからせるものは,いまの知を超える知である。
    よって,いまの知を超える知を獲得するまでは,無知はわからないわけである。
    《自分の無知がわからない》は,構造的なものであり,如何ともしがたいことなのである。


    しかし,《いまの知を超える知を獲得するまでは,無知の(てい)で待機》というのは,なんとも気が利かない様である。
    そこで人類は,推理というものを発明した。

    推理とは,「理を論理で推す」である。
    もっともらしいと今思えている理を,もっともらしいと今思えている論理で推すのである。
    推理は,現実をらくらくと超える。
    そこで,現実で煮詰まっている今の知を超える方法になる。
    この方法で,いまの知を超える知にアプローチできるかも知れない。


    「新型コロナ」が示した「専門家」の無知は,彼らが「隔離」「医療」「薬・ワクチン」を語る物言いからわかる。
    彼らは,矮小の極まりのような体モデルを用いている。
    その体モデルは,精密機械モデル (自己充足モデル) である。

    精密機械モデルがどんなものになるか,肺を考えてみよう。

    肺は外界に開放されっ放しである。
    空気に乗る微小粒子は,呼吸で吸い込まれる。
    そして,鼻腔や喉や気管や気管支で引っ掛かるような大きさでないものは,肺胞に至る。

    肺胞にまで至る微粒子は,「ほんの僅か」ではない。
    ひとにとって普通の「空気中の微粒子の個数」は,1cm3 あたり10万個のオーダーであり,その大部分が,呼吸で肺胞に到達するくらいに小さいのである。

    肺胞に入った微粒子は,肺胞に沈着する。
    沈着した微粒子はどうなるのか?
    「蓄積する一方」は,考えられない。
    「クリアランス」システムの存在を,考えることになる。

    「クリアランス」システムは,精密機械モデルだと,つぎの3通りくらいで考えることになる:
    1. 肺胞分泌液による溶解
    2. 細胞による吸収と分解 (「貪食」)
    3. 他の部位に移送──間質への浸透,血液/リンパ系への移行

    しかしこれは「クリアランス」にはなっていない。
    「分解・移送できないゴミ」問題が生じる。
    「クリアランス」は,ゴミ処理業者が必要になるのである。

    そのゴミ処理業者は,だれ?
    肺胞に棲む微生物たちである。

    「クリアランス」の一事を挙げるだけで,精密機械モデルは破綻する。
    肺は,生態系モデルで考えるものなのである。


    体は,1つの生態系である。
    体から他の生物を除いたら,体でなくなる。
    体のメカニズムは,生態系のダイナミクスである。
    体は,機械ではない。
    体のメカニズムは,機械のメカニズムではない。

    体が1つの生態系であることは,体の部位レベルで,少しずつ知られてきている。
    研究標題は,「○○常在微生物叢」。

    「○○常在微生物叢」が論じられているのは,いまはまだ「皮膚常在微生物叢」と「大腸常在微生物叢」くらい。
    特に呼吸器系の方はさっぱりである。
    実際この結果が,「新型コロナ」の見当違いの大騒ぎというわけである。


    「常在微生物叢」の意味は,「上皮常在微生物叢」である。
    ひとの上皮は,つぎのようになっている;
(絵を煩雑にしないために,泌尿器官・生殖器官は省略)

    「皮膚常在微生物叢」と「大腸常在微生物叢」から推理すれば,「肺常在微生物叢」が存在している。
    そしてこれが,肺機能に決定的に関わっている。

    そこで, 「肺常在微生物叢」を考えてみることにした。
    方法は,はじめに述べた「推理」である。


    註 : 実物調査の困難
      「肺常在微生物叢」は,ファイバースコープの解像度ではわからない。
    ──それ以前に,いまのファイバースコープ (直径3mm以上) は,肺胞 (大きさ0.1〜0.2mm) に入らない。
    また,つぎは法や倫理にひっかかるので,やれない:
     《 健康な人から肺 (の一部) を直接取り出して調べる》
    一方,いまはまだ「無菌が健康」が医療の立場なので,つぎはごまかしてやれるかも知れない:
     《 健康な人に,微生物駆除剤を吸入させて微生物をノックダウンし,後遺症を観察する》