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戸田忠雄 (1939), pp.175-178
顔面,頸部,腋窩,陰部などの皮膚に,とくに多くの細菌がみられる。
グラム陽性の表皮ブドウ球菌,Micrococcus,それに毛包管内に生息する嫌気性の Propionibacterium などがおもなものであるが,それに加えて真菌の Candida属や Pityrosporum属なども存在する。
また Streptococcus なども認められることがある。
皮膚1cm2 当たりの菌数は,通常 103〜104 程度であるが,多いところでは 105 くらいがみられる。
これを十分に消毒すれば一時的にはほとんど無菌に近くなるが,問もなく毛包管や汗腺などから残存した菌が出現して元に戻る.
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藤田紘一郎 (2002), pp.181-183.
最近、顔や体の洗いすぎによって、皮膚病にかかる若い人が増えている、ということを皮膚科医たちは指摘している。
人間の皮膚には表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌をはじめとする約10種類以上の「皮膚常在菌」という細菌類がいて、私たちの皮膚を守っている。
これらの皮膚常在菌は皮膚の脂肪を餌にして脂肪酸にしている。
したがって、正常なヒトの皮膚は「弱酸性」なのだ。
皮膚が酸性であると、外から病原菌が侵入してきてもそれを寄せつけない仕組みになっているのだ。
一回のお風呂で石けんを使うと、皮膚の常在菌の90パーセントぐらいが洗い流されるという。
しかし、12時間経過すると、残りの10パーセントの菌が増殖して元に戻る。
したがって、1日1回、お風呂に入って普通に洗う、ということであれば大丈夫ということになる。
しかし、強力な洗浄力のあるボディシャンプーを使い、ナイロン製タオルでごしごし洗ったり、1日2回以上お風呂に入り石けんで洗ったりすると、皮膚常在菌がいなくなってしまうというわけだ。
では実際に洗いすぎはどんな皮膚病を招いているのだろうか。
洗いすぎは皮膚常在菌を取り除いて、皮膚を中性にしているばかりか、皮脂をはがし、アトピー性皮膚炎や乾燥性皮膚炎を発症させる引き金となる。
最近、若い人でも冬になると、皮膚がカサカサになり、かゆくて仕方がないと訴える人たちが増えている。
洗いすぎで問題となるのは、薄い膜を張って私たちの皮膚を守っている皮脂膜とその下の角質層だ。
正常な角質層だと、細胞が密に手を組んで何層にもわたって存在し、ほこりや、ダニなどアレルギーを引き起こす原因物質や、病原菌などの皮膚深部への侵入を防いでいる。
しかし、洗いすぎによって皮脂膜がはがれると、角質層にすき間が生じ、皮膚を組織している細胞がばらばらになっていく。
その結果、皮膚に潤いを与えている水分の多くが蒸発して、いわゆる乾燥肌、ドライスキンとなるのだ。
新しい角質層が生まれてから死ぬまで、皮膚はおよそ1ヵ月のサイクルで新旧交代を繰り返している。
ところが、肌をごしごし洗うことで、そのサイクルが狂わされてしまう。
デリケートな肌を守るためには、洗いすぎないように自分を意識づけるしかないだろう。
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- 参考/引用文献
- 戸田忠雄 (1939) :『戸田新細菌学』, 南山堂, 1939
- 第34版 : 吉田眞一・柳雄介・吉開泰信[編]『戸田新細菌学』, 南山堂, 2013
- 藤田紘一郎 (2002) :『バイ菌だって役に立つ──清潔好き日本人の勘違い』(講談社+α文庫), 講談社, 2002.
- 参考Webサイト
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