Up 新聞の手前味噌のつくり方 作成: 2023-11-28
更新: 2023-11-28


      読売新聞, 2023-11-25
    新聞・テレビ「信頼」68%
    メディア価値観調査 保守・リベラル層 差なし
     スマートニュースメディア研究所は24日、政治的立場の違いなどにより生じる社会の「分断」について、国内の状況を分析した「メディア価値観全国調査」の結果を発表した。 国内で、新聞やテレビなどのマスメディアを「信頼している」とした人は68%で、保守とリベラル層の間でほぼ差はなく、支持政党によってマスメディアへの信頼度が大きく異なる米国との違いが浮かび上がった。
     調査は今年3月に全国の 18〜79歳の男女4460人を対象に郵送方式で行い、1901人が回答(回答率43%)。 「ニュースを十分かつ正確、公平に報道する点においてマスメディアを信頼しているか」との質問で、「信頼している」とした回答は、政治的立場が保守的の人は69%、リベラルは67%、中間は70%だった。
     米世論調査会社のギャラップが2022年9月に行った世論調査では、同様の質問に対して、メディアを「信頼している」との回答が、民主党支持層で70%だったのに対し、共和党支持層は14%にとどまった。
     小林哲郎・早大教授(社会心理学)は「日本は米国より報道の質の低下が目立たず、受け手側である国民も米国ほど政治的立場が分かれていないことが結果に表れた」と分析している。
     調査は今回が初めてで、同研究所と世論調査などの専門家でつくる研究会(共同座長=池田謙一・同志社大教授、前田幸男・東大教授)が2年ごとに10年間実施する。 米国では保守層とリベラル層の価値観の差が激しく、接触するメディアも大きく異なる。 調査では、SNSを含めたメディア接触の傾向などを欧米のデータと比較し、国内の社会の分断の動きを分析する。

    「スマートニュースメディア研究所が24日に発表」とあるのは,シンポジウムでの発表であり,報告書の形の公表にはまだなっていない。
    回答者の年齢偏倚が示されていないことも合わさって,「信頼 68%」の意味合いは不明である。

    そもそも,新聞のいまの発行部数は,読売・朝日・毎日・日経 産経5紙の ABC部数で見て,つぎのような具合である:

      2000年前後をピークにして,下降:
    年度読売新聞朝日新聞毎日新聞日本経済新聞産経新聞
    200010,224,0668,322,0463,976,3573,044,2141,997,702 27,564,385
    201010,016,7357,955,5953,593,8673,032,7031,633,219 26,232,119
    20207,762,3035,214,2882,300,2482,210,3041,342,488 18,829,631
      2021年:
    2021年読売新聞朝日新聞毎日新聞日本経済新聞産経新聞
    6月6,860,2224,298,5131,933,7141,753,8771,026,293 15,872,619
      2022年:
    2022年読売新聞朝日新聞毎日新聞日本経済新聞産経新聞
    9月6,677,8233,993,8031,871,6931,702,2221,008,642 15,254,183
      2023年”,
    2023年読売新聞朝日新聞毎日新聞日本経済新聞産経新聞
    7月6,295,9203,636,6751,659,1531,473,712951,020 14,016,480

    しかも,つぎのように言われている:
     「 ABC部数には「押し紙」(註) が含まれているので、新聞の実配部数は、ABC部数よりもはるかに少ない


    読売新聞は「信頼 68%」のことばを,ひとがかってに「国民の 68% が信頼」と受け取ることを期待している。
    しかし「信頼 68%」は,つぎのようにも読めるのである:
      「回答率43%」は,「何らかの形で新聞を読んでいるのは,国民の43%」
      「信頼 68%」は,「そのうちで新聞を信頼しているのは,68%」
    そしてこのときは,つぎのようになる:
      「国民の ( 0.43 x 0.68 ) x 100 = 29% が信頼」


    註.「押し紙」とは
      MEDIA KOKUSYO から引用:
    ABC部数には、広義の「押し紙」が含まれている。
    新聞販売店が新聞社に提出する「注文書」に記入する「注文部数」にも、すでに「押し紙」が含まれており、複雑な問題となっている。
    「注文部数」に含まれている部数を排除する目的で、公正取引委員会は新聞特殊指定を運用していたが、1999年の改訂により「注文部数」の中に含まれている残紙を「押し紙」として定義しなくなった。
    新聞業界に便宜を図ったのである。
    それが「押し紙」が飛躍的に増えた原因にほかならない。」