Up 「赤字財政」: 要旨 作成: 2021-12-20
更新: 2021-12-20


    日本の財政がどんなものかを知るには,社会保障給付金支出を見るのがいちばんである。
    ここに,わかりやすい絵がある:
読売新聞, 2021-12-19


    この支出に対し,2021年度予算の税収は:
消費税 20兆2840億円
所得税 18兆6670億円
法人税 8兆9970億円
相続税 2兆2290億円
57兆4480億円

    「社会補償給付費」はおよそ半分が年金だが,この年金分はどう考えたらよいか?
    ひとは年金が「年金積立金」の運用で賄われていると思っているが ‥‥‥

    年金の保険料収入と給付費は,つぎの関係になっている:
2016年度 2017年度 2018年度
保険料収入 国民年金 1兆5069億円 1兆3964億円 1兆3904億円
厚生年金 34兆2858億円 35兆8723億円 36兆9892億円
計  35兆7927億円 37兆2687億円 38兆3795億円
給付費 国民年金 22兆3233億円 22兆9630億円 23兆3817億円
厚生年金 29兆0248億円 29兆8027億円 29兆2108億円
計  51兆3481億円 52兆7658億円 52兆5925億円

    ここで問題は,国民年金の収支赤字:
      保険料収入ー 給付費 = 1兆3904億円 − 23兆3817億円
                 = − 21兆9913億円
    税収の3分の1を超える額である。

    そこで,「この赤字は年金積立金の運用で埋められているのか?」の疑問になる。
    「年金積立金」は,つぎのようになっている:
年度 時価ベース数値
2015 134兆7475億円
2016 144兆9034億円
2017 156兆3832億円
2018 159兆2154億円
2019 150兆6332億円

    積立金の運用は,投資である。
    その収益は,景気に大きく左右される:
年度 収益
2016 7兆9363億円
2017 10兆0810億円
2018 2兆3795億円
2019 ー8兆2831億円
2020 37兆7986億円

    国民年金を維持するためには,<年に平均22兆円の収益>を実現しなければならない。
    これは,土台無理なことである。
    国民年金給付は,国の予算を頼むことになる。


    というわけで,「社会保障給付費」を見るだけで,財政が破格の赤字財政であり,そして構造的な赤字であることがわかる。
    そして構造的な赤字ということは,「もう手の施しようのない赤字財政」ということである。

    では,政府は超過支出をどうやって実現しているのか?
    「金造り」で実現している。
    個人が金造りをしたら犯罪だが,国は金造りをしてよい──というより,国の財政は金造りが中心である。


    こんなやり方は,続けていけるのか?
    この先どうなるのか?
    わからない。
    どうなるかは,日本が身を以て示してくれることになる。
    ありがたく勉強すべし。