Up 「日本の財政」の押さえ 作成: 2022-06-18
更新: 2022-06-19


    赤字/造金財政の日本は,現代貨幣理論 (MMT) の壮大な実験場になっている。
    興味は,これがどんな結果になるかである。

    この実験は,財政指導者がブレてしまうと,結果を見届けることが出来ない。
    この「心配」は,黒田日銀総裁のこの度の発表で一旦「安堵」させられることになった:

読売新聞, 2022-06-18


    日本の財政は,赤字/造金財政である。
    「財源」「どこを増やす代わりにどこを削る」の考えは,捨てている。

    大衆は,日本の財政をまったくわかっていない。
    例えば「防衛予算増額」のことばが出てくると,
      代わりにどこを削ろうというのか!
      増額分を給付金に回したら○○万円
    のようなことをまだ言っている。
    彼らは「国民一律10万円給付」みたいのに対しては「代わりにどこを削ろうというのか!」を言わないが,そのことに矛盾を感じない。

    というわけで,ここで改めて日本の財政の内容を押さえておく:


    2021年度の歳入・歳出は,つぎのようになっている:  
財務省主計局 (2022), p.29

    借入を引いた歳入は:
        296.3 - 135.0 = 161.3 兆円
    借金返済を引いた歳出は:
        296.1 - 99.5 = 196.6 兆円
    よって,つぎの額の歳出超過となる:
        196.6 - 161.3 = 35.3 兆円

    35.3 兆円の金が足りない!
    どうする?
    造るのである──「国債」という格好で。

    この額は,一般会計歳入の「公債金 (借金)」に計上される (後述)。


    大衆が思っている「歳入・歳出」は,「一般会計」の歳入・歳出である。
    マスコミが報道するのが,専らこれだからである。

    2022年度の一般会計 (予算) の歳入を,2021年度の歳入全体と並べると:
財務省 (2022), p.2

    一般会計の歳入は,税収と借金で成っている。
    一般会計の税収部分:
        所得税 20.4兆円 + 法人税 13.3兆円 + 消費税 21.6
            + その他税収 9.9兆円 = 65.2 兆円
    は,歳入総計のグラフの「租税及印紙収入」と対応している。
    そして一般会計の「公債金 (借金) 36.9兆円」は,
      歳出超過に充てるために新たに造る金の額 (前述)
    と対応している。


    2022年度の一般会計 (予算) の歳出を,2021年度の歳出全体と並べると::
財務省 (2022), p.1

    一般会計の「社会保障」は歳出総計グラフの「社会保障関係費」と対応するが,部分的である。
    一般会計の「国債費」は歳出総計グラフの「国債費」と対応するが,部分的である。
    差額はどうなっている?
    これは,特別会計の中にある(註)


    一般会計は,大衆に「支出が税金で賄われている」と思わせるための騙しである:

    実際,社会保障関係費の支出だけで,税収の 1.5 倍なのである:


    このように日本の財政は,赤字を当たり前にしている。
    そして赤字分の支払いは,金造りでこれをする。
    この結果が,つぎである:
財務省 (2022), p.4

    2021年度は 37兆円の金造りなので,いまは3年ごとに100兆円が積み重なるというペースである。



    註: 日本の財政は,「一般会計・特別会計」の枠組になっていて,わかりにくい。
    わかりにくいのは,もともとわざとわかりにくくするためものだからである。
    実際,様々な利権とズブズブの関係をつくることになる地方自治体は,もっとわかりにくい会計をつくっている。
    <大衆を騙す>も,会計の一面なのである。
    こんなもんだと達観すべし。

財務省主計局 (2022), p.28


財務省主計局 (2022), p.10




    引用文献
    • 財務省主計局 (2022) :『令和3年版 特別会計ガイドブック』
        https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/special_account/fy2021/
    • 財務省 (2022) :『これからの日本のために 財政を考える』
        https://www.mof.go.jp/policy/budget/fiscal_condition
          /related_data/202204_kanryaku.pdf