Up 信用創造 作成: 2020-04-26
更新: 2020-04-26


      Chikahiro Hanamura「お金のカラクリ」 から:
     この信用創造はなぜ可能なのだろうか。
    そのカラクリは信用創造の起源にある。
    少々回り道をして紙幣というものが一体どういうものなのかを考えてみる。
    お金の貸し借りの仲介や異なる通貨同士の両替をする金融自体の機能は近世に入る頃までは両替商や商人などによって行われてきた。
    その頃にも預かり証や手形という形のものもあったが、基本的には金貨などの貴金属がやりとりされていた。

     紙幣が本格的に国家の承認を受けた通貨として流通するのは、17世紀以降である。
    具体的には1661年にスウェーデンの民間銀行であるストックホルム銀行が発行した「銀行券」が最初のものであると言われている。
    しかし広く流通し始めたのは1694年にイギリスで設立されたイングランド銀行の約束手形であるとされている。
    もともとこの銀行は軍事費を調達する目的で設立されたとも言われている。

     1650年代にはすでにロンドンでは商人たちの手によって個人銀行の業務が行われていた。
    その時の主要な決済手段も金(ゴールド)であったが、金を手元に抱え込むリスクを軽減する必要があった。
    そこでロンドンで一番頑丈な金庫を持つ金細工匠のゴールドスミスに金を預けることにした。

     ゴールドスミスは金を預かった証拠として、預かり証を発行してそれを金の所有者に渡した。
    これがいわゆる紙幣の始まりである。
    金庫に金がいくら保管されているということが書かれた単なる預かり証だが、それをそのまま取引に用いることができる。
    これが決済業務の起こりになったと言われている。

     この金庫に預けられている金というのは、一度に引き出されることはない。
    だから常に一定量の金が金庫に保管されている状態になることをゴールドスミスは気づいたのである。

     つまりその金の一部を誰かに貸し出しても分からないのである。
    その一定量残っている金に関しても預かり証を誰かに出す (「お(かね)を貸す」) ことをゴールドスミスは考えるようになった。
    預かり証には名前を記載するのではなく、”この預かり証と金を交換する”という内容を記載すれば、別の人も使うことができる。
    そうやって預かり証で決済が行われるようになると、金はさらに引き出されることなく金庫に眠ることになる。

     そうやって預かり証の発行を繰り返すことで、実際に預けられている金以上の預かり証が世に出回るようになった。
    これが信用創造の起源である。