Up 「財政投融資」 作成: 2020-05-29
更新: 2020-05-29


      石川達哉 (2015), p.2
    国の財政状況を語る際、債務残高の数値には、通常、財投債の分は含めない。
    それでも、財投債は国債である。それどころか、国債市場の発行、流通、償還の各局面において、財投債は普通国債と何ら異なることはない
    と言われる。
     実際、国債の投資家は、自らが購入しようとする国債が財投債であるか否かを意識しているだろうか? どの銘柄が財投債かを正確に把握しているだろうか?
     おそらく、国債発行当日に、どの銘柄が財投債かを市場参加者が知ることはできないはずである。銘柄レベルでの詳細な情報が広く公表されるのは、数日後の官報における「国債の発行要項」を通じてであり、発行された国債のある銘柄の一部、発行額の一部が財投債であったことを知ることができる。良く言えば、名実ともに財投債は普通国債と一体のものとして発行されていると言える。他方、悪く言えば、財投債の発行の仕方は「後出しジャンケン」にも似ている。
    毎年公表される「国債統計年報」においては、銘柄毎の財投債発行額が掲載されているし、残存する財投債の総残高も掲載されている。しかし、繰上償還に当たる「買入れ消却」の詳細情報が銘柄毎に掲載されている訳ではないため、財投債の正確な残高を銘柄毎に知ることはできないはずである。
     ‥‥‥
    国債償還に対する信頼が損なわれた状況下でも、償還財源がすでに確保されている国債とそうではない国債とが同列に扱われるとは限らない。また、財政投融資制度に関しても、旧国鉄清算事業団や国有林野事業特別会計のように、資金供給先の債務を最終的には国の一般会計が継承したケースもあるから、単純に財投債は償還財源がすでに確保されている国債であるとみなされるとも限らない。