Up 世界乾燥化時代の日本商いとその末路 作成: 2023-12-02
更新: 2023-12-02


    ひとは「食料自給率38%」「食料安保」を聞かされて,危機感をもつ。
    同時に,「危機」の中身について考えるまでには行かない。,

    食料自給率は、国内で消費された食料のうち国産の占める割合。
    生きるだけに必要な食料のうち国産の占める割合,ではない。
    生きるだけなら国産で足りる。
    「食料の国内消費」の「消費」は,「商いで消費」である。
    実際,「消費」の多くを,不用廃棄,飲食癖,社交が占めているわけである。


    食料は,先ず商品である。
    食べるは,その後である。

    食料生産・食料供給の目的は,食料を金に換えることである。
    日本は観光立国へのシフトにやっきになっているが,「観光立国」は「食料を金に換える」を中心に回っている。

    実際,「食料自給率38%」を言いながら,日本は食料輸出に一生懸命である。
    福島原発放射能汚染水の海洋放出に対し,中国が日本の海産物の輸入を中止した。
    日本の漁師や商社が困ること,したがって日本政府が困ることを,知っているからである。
    日本は,国産食料を外国に売りたいのである。
    国内より外国の方が高く売れれば,外国に売る。
    これが商いというものであり,経済というものである。


    世界はいま乾燥化に向かっている。
    ひとはわかっていないが,日本にとって世界の乾燥化は,「食料が輸入できなくなって困る」という話ではなく,「乾燥化で食料に困るようになった外国に,日本産を売れる」という話になる。

    食料生産・輸出が金になるとわかるや,これが大規模に行われるようになる。
    これまで自然を蕩尽してきた量を何倍にもした量の蕩尽に進む。
    物が金に換えられるようになると,自然は蕩尽される一方になるのである。
    そしてこの結果は,耕地の不毛化,漁場の不毛化である。


    北海道のニシンは,獲っただけいくらでも売れるようになった時,乱獲されていなくなった
    肥料 (鰊粕) として本州の畑に撒いたわけだから,そりゃあたまったものではない。
    いま「温暖化」のせいにしているイワシ・サンマの不漁も,乱獲のためである。
    ふるさと納税を得るのに食料品を使う自治体なんかも,この轍を踏んでいるわけである。


    不毛化したところは,もとに戻らない。
    そこは,長い時間をかけて生物がつくってきたものだからである。
    もとに戻るには,それと同じだけの時間をかけねばならない。

    こうして日本もまた,沙漠になる。
    ──沙漠化は,乾燥化とは限らない。

    と,まあ一つの論理を紡いでみたが,実際は如何?