Up 年金運営の実際 : 要旨 作成: 2020-12-05
更新: 2020-12-08


    「国民年金」のキャッチコピーに, 「受給総額>支払総額」がある。
    それは,つぎのようなイメージということになる:
      40年間満額で保険料を納め,65歳から年金を受け取るとする。
      日本人の平均寿命は,2018年で,男性 81.25 歳, 女性 87.32 歳
      国民年金の支払・受給額は,2018年ベースで
        支払月額 16,340円
        受給月額 64,941円
      40年間満額で支払うと,
        支払総額 : 約784万円
          16,340円 ✕ 12ヵ月 ✕ 40年間 = 784万円
      そして,65歳から平均寿命まで年金を受け取るとき
        受給総額
          男性 : 約1,266万円
            64,941円 ✕ 12ヵ月 ✕ (81.25 - 65)年 = 1,266円
          女性 : 約1,739万円
            64,941円 ✕ 12ヵ月 ✕ (87.32 - 65)年 = 1,739円


    年金は,毎年,保険料収入を超えた額が支出されている:
2016年度 2017年度 2018年度
保険料収入 国民年金 1兆5069億円 1兆3964億円 1兆3904億円
厚生年金 34兆2858億円 35兆8723億円 36兆9892億円
計  35兆7927億円 37兆2687億円 38兆3795億円
給付費 国民年金 22兆3233億円 22兆9630億円 23兆3817億円
厚生年金 29兆0248億円 29兆8027億円 29兆2108億円
計  51兆3481億円 52兆7658億円 52兆5925億円

    年金積立金はどのくらいあるかというと,2019年度で
      • 運用資産額 : 150兆6,332億円
      • 運用収益  : -8兆2,831億円 (収益率 : -5.20%)
    保険料収入 − 給付費 は,2018年度で
      38兆3795億円 − 52兆5925億円 = −14兆2130億円
    年金給付をもし年金積立金で賄うとしたら,せいぜい10年ちょっとで使い切ることになる。


    実際,赤字収支は,国の予算で帳尻合わせをする (「年金特別会計」)。
    赤字は,「国債」と称する債務で補填する。──この中身は,「金造り」である。
    会計に色々な名前をつけて目くらましをする。
    ──そもそも「金に色はついてない」から,保険料収入が給付費に回るわけでもない(註)
    この結果が, つぎのような「バランスシート」である:



    「年金積立金」「安心制度設計」は,騙しである。
    しかし,「赤字収支」を言うならば,国の財政からしてそうである:
    • 2018年度の税収は,57.7 兆円
      このうち
        所得税 19.9 兆円
        消費税 17.7 兆円
        法人税 12.3 兆円
        ──以上の計:49.9 兆円
        (年金給付費 52.6 兆円より少ない!)
    • 国債及び借入金現在高 (2019年12月末)
        内国債   987兆円
        借入金 52兆円
        政府短期証券 71兆円
        合計 1110兆円


    これらのデータに対して「国が破産!」のリアクションをするのは,俗物である。
    ここは,「なんでこんなやり方が通用するのか?」と,先ず不思議に思うべきところである。

    実際,国は金を造ることができるので,「破産」は無い。
    「金が市中に溢れる → ハイパーインフレ」はだれでも頭に浮かぶが,これを論証できた者はいない。

    俗物は,己の思考停止を肯定するために,己の単純思考に味方しない論に対し「トンデモ論」のことばを使う。
    数学・科学にいささかでも関わってきた者は,俗物の謂う「トンデモ論」に問題の意外な核心が含まれていることを見てきたものである。
    ここはひとつ「トンデモ論」を編み出してみるところか。