Up 中銀デジタル通貨なら信用できる 作成: 2020-10-27
更新: 2020-10-27


    国を中抜きし,国による世界の縦割りを横断するP2P通貨は,国がこれの管理・統制・召し上げに向かうところとなる。
    このとき,「民間にまかせていたら犯罪にまみれるばかり」「国のデジタル通貨になれば安心」を,管理・統制・召し上げが必要な理由として国民に伝える。


    国の通貨は,安心なわけではない。
    実際,仮想通貨ブームの契機は,国の通貨の不安であった:
      中島真志 (2017), p.48
    ‥‥ ビットコインが注目されるようになったきっかけは、2013年3月のキプロス危機にありました。 このとき、キプロスでは、銀行預金への課税や預金封鎖が検討 (一部は実施) されました。 これを受けて、預金封鎖を嫌ったキプロスの資金 (その多くはロシア・マネーであったものとみられています) が、ビットコインに流出し、ビットコインの相場は、それまでの 1BTC=5ドルから250ドル以上にまで一気に急騰しました。 この時、ビットコインは、資金の安全な避難先(セーフ・ヘブン・アセット) として買われたのです。
      同上, pp.77,78
    では、なぜ中国のビットコイン取引所にこのように取引が集中しているのでしょうか? 中国の取引所でのビットコインの売買高が急増したのは、2015年8月の人民元の切下げ以降のことです。 この切下げをきっかけに、人民元の先安観が高まりました。 このため、人民元を大量に保有していた中国の富裕層の間では、人民元をドルなどの外貨に移す動きが広がりました。 しかし、中国では、人民元の出入りに対しては、厳しい資本規制が課されています。 また、このような資本の流出につながる取引の広がりに対しては、外貨両替に上限額を設ける、申請書の提出を義務付けるなど、規制がさらに強化されました。
     こうした規制を回避する手段として使われたのがビットコインだったのです。 ビットコイン取引所については、規制が緩く、また外貨両替の規制の対象にもならなかったことから、中国の富裕層は、人民元をいったんビットコインに換えたうえで、あとでこのビットコインを必要に応じて米ドルなどの外貨に換えるという動きに出たのです。 つまり主として、当局の資本規制をくぐり抜ける手段としてビットコインが使われているのです。


    「自国通貨なら安心」と思う者は,国連加盟193国の実態を思うべし。
    GAFA規模のP2P通貨シンジケートがもし登場したなら,国民が自国通貨の方に信用をおくような国は,なんぼも残らないのである。

    日本円だって,あやしいものである。
    日本の財政は,財政出動を体質にしてしまい,税収数十兆円に対し今後100兆,200兆円の財政出動が当たり前になる。
    新型コロナの程度の感染症を大事(おおごと)にしてしまい,これと引き換えに国の経済をすっかり傾けさせてしまう。
    こんなインテリジェンスが運営する通貨より,巨大国際シンジケートのインテリジェンスが運営するP2P通貨の方に信用が向くようになっても,不思議はないのである。

    欧米主要国も,新型コロナ対策への財政出動が決定的となって,財政がこれからは財政出動型になり,債務を増大させるばかりとなる:
      読売新聞, 2020-10-18
    米財政赤字330兆円
    20年度 コロナ対策で最悪
    米財務省は16日、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する経済対策で歳出が膨らんだことで、2020会計年度(19年10月i〜20年9 月)の財政赤字が過去最悪の3兆1320億ドル (約330兆円) に達したと発表した。
     11月の大統領選では共和党のトランプ大統領、民主党のジョー・パイデン前副大統領ともに追加の財政出動を訴えており、財政再建は見通せない
     20会計年度の赤字幅は、前年度 (約9800億ドル) の3.2倍にあたる。
    これまでで最悪だったリーマン-ショック後の09年度 (約1兆4000億ドル) の2倍超となった。
     コロナ関連の経済対策が総額3兆ドル規模に上ったため、'歳出は前年度から約1 .5倍の6兆5520憶ドルに膨張した。 歳入は1%減の3兆4200憶ドルだった。 景気低迷を受けて法人税や所得税の税収が減った。
     国際通貨基金(IMF) は、米国の20年の財政赤字の国内総生産(GDP)比が前年から12.4ポイント増の18.7%、政府債務残高GDP比は22.5ポイント増の131.2%になると見込んでいる。


    こうして,国家権力は自国通貨 (中銀通貨) の危機を将来に見据えて,国際シンジケートP2P通貨の国内流通は禁止しなければならない。
    そして,P2P通貨の需要/必要に対しては,法定デジタル通貨としての中銀デジタル通貨の運営を以て応える──という流れになる。
    ただしこれを強権で行えるのは,独裁体制の国である。


  • 参考文献
    • 中島真志 (2017) :『After Bitcoin』, 新潮社, 2017.