|
読売新聞, 2020-10-17
銀行の本人確認 厳格化
金融庁方針 不正引き出し防止
金融庁は、キャッシュレス決済で銀行口座からお金が不正に引き出される事件が相次いでいることを受けて、銀行側に厳格な本人確認を義務づける方針を固めた。
年度内にも銀行への監督指針を見直す。
不正引き出しでは、銀行側の本人確認の甘さが被害拡大の一因となった。
金融庁は銀行に安全対策を徹底させることで、再発防止につなげる。
指紋など複数手段 義務
具体的には、銀行と決済サービス事業者との間で、口座振替の手続きをする際、銀行側に対し、一時的なパスワードや指紋認証といった複数の手段で本人確認をするよう義務づける。
NTTドコモの決済サービス「ドコモ口座」を通じた不正引き出し事件では、何者かがサービスの利用者らの氏名や口座番号、暗証
番号などを不正に入手。
本人になりすましてサービスに登録し、銀行口座とひもづけでお金を引き出したとみられる。
被害が集中した銀行では、口座番号や暗証番号などを入力すれば決済サービスと銀行口座をひもづけることが可能だった。
こうした簡素な対策が被害の拡大を招く要因になった。
ゆうちょ銀行では、ドコモ口座などを通じた被害額が、利用者の申告ベースで約6000万円に上り、一部の地銀でも被害が広がった。
一方、口座をひもづける際に、一時的なパスワードなどを発行している大手銀行ではほとんど被害が出ていない。
銀行の本人確認の方法により、被害状況に差が出た。
現在の監督指針は、決済サービスと口座をひもづける際、必ずしも銀行側に複数の手段での本人確認を求めていない。
口座振替はこれまで、電力会社や地方公共団体など、詳細に本人確認を実施している企業や団体を対象に行われることが多かった。
金融庁は「口座振替を通じた引き落としへの対応が後手に回っていた面もあるかもしれない」(幹部) としている。
一連の問題では、決済サービス事業者が本人確認を銀行任せにしていたことや、被害者への返金が遅れたことも判明している。
このため、金融庁は決済事業者の事務指針(ガイドライン)も見直す方向で検討している。
銀行側と協力して不正な取引がないか確認を徹底することや、補償や返金の仕組みを銀行と事前に決めておくことなどを求める方針だ。
小口の決済が多いコンビニエンスストアなどでは、スマートフォンなどを使った決済サービスを使う人が増えている。
こうした決済サービスは銀行口座などとひもづけることで利用するケースが多い。
金融庁は本人確認を徹底することでサービスの安全性を高め、キャッシュレス化を後押しする狙いもある。
|
|
財布の中の金は,貯金から補給する。
デジタル通貨の場合,「貯金からの補給」は,銀行の自分の預金口座から決済サービス会社の自分の口座への振替である。
デジタルマネーの便利さには,この振替が簡便であることが含まれる。
そして「振替の簡便」には,本人確認が簡単であることが含まれる。
しかし,本人確認が簡単なところは,本人なりすましの犯罪にやられてしまう。
便利と安全は,相反する。
クレジットカード会社なんかは,本人なりすまし犯罪を最初から統計的に見込んでいて,犯罪被害に補償で対応している。
しかし銀行は,「本人なりすまし犯罪を最初から見込む」はあり得ないところとなっている。
こうして,なりすましの犯罪が起こるたびに,本人確認の厳格化が国から指導されることになる。
銀行ばかりでなく,オンラインサービス全般が,本人確認が係わるところは,ますますオンラインではできなくなってきている。
即ち,郵便でやり取りという,気の利かない形になってきている。
コンプライアンスの時代は安全第一に立たねばならないので,面倒なことを増やすばかりとなるのである。
中銀デジタル通貨が成るとき,国民の中に《市中銀行の預金口座をやめて,中銀デジタル通貨口座を預金口座にする》の流れが生まれる。
中銀口座にメリットがいろいろ見られてこうなるわけだが,そのメリットの一つに《本人であることの証明が厳格に求められる口座振替を,無しで済ませられる》がある。
|